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電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿
【ファンタジー その他小説】

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電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 ―桜編―-4

「この木かあ」
 真琴もこの桜は何度か見たことがあるが、じっくりと眺めたことはなかった。
 工事中の看板で周りが囲われている。この桜はどこかよそに移されると聞いた。伐られるわけではない。
「……これ、名前……」
 彩花が呟く。桜の幹には沢山名前が彫られており、昔からこの噂があったことを物語っている。
「ありましたか、先輩?」
「うん……ある」
 彩花が指し示す名前は真新しく、最近彫られたことを示していた。
「駆け落ちじゃないですか?」
「違うよ……大学出たら結婚するよって、両親に話したって言ってたもん」
(イマドキの学生はやること早いですねー)
(プクトは黙ってて)
 桜の樹自体には奇妙な気配はない。しかし、昔じぃさまに聞いた話では、古い樹木に手を加えようとすると、周囲が拒否することがあるという。樹木には〔意志〕を蓄える力があるという。樹を守りたいという周囲の〔意志〕が働き、〔現象〕を起こすことがあるらしい。
 特にこういった噂になるような樹木にはそういった〔意志〕も強くあるだろう。
「やっぱり、移動させようとしたのがダメだったのかしらね」
「……意外。倉本さん、こういう話バカにするかと思ったけど」
「信じて差し障りがなければ信じない理由もないですから」
 記憶がない彩花と記憶を保っている佳奈の〔現象〕に対する温度差が感じられる。
「小林さんは? どう思う?」
「アタシは……」
 頭を振る。この桜が天然の〔増幅器〕となって何らかの〔現象〕を起こしているなら、真琴なら桜に触れれば分かる話なのだ。
「どうでしょうね、これは……」
 桜に触れる。

 消失。

「…………」
「…………え?」
「……あ、あれ? 小林さんは?」
「消えた、ように見えました……先輩は」
「私も……」
(あららー。大変なことになっちゃいましたねー)
 脳天気なのは姿を見せないプクトだけ。残された二人は突発的な事態に混乱するしか出来なかった。


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