僕らの関係 残るヌクモリ。-22
「あれ……、ゴメン幸太君。私、ゴム無いや」
頭を掻きながらエヘヘと笑う美雪は舌を噛む。
「しないでする? でも美雪、危ない日だし……恵は持ってない」
「すみません。部室です」
恵も準備しているのだと知ると、幸太は少し複雑な気持ちになる。里奈や由香もそうだったが、女子は男子に比べ大人になるのが早いのだろうか? それとも、自分が遅いのだろうか?
「そっか、じゃあ買いに行こっか?」
「今からですか? でも、父さんたち帰って来るかも……」
時計は既に九時を回っている。今日は休みのはずなのに、一体何処へ行ったのだろう。せめて書置きくらいあってもいいはずだが……。
「そうだ、コウの携帯鳴ってた。代わりに出たけど、コウのパパとママ、今日は仕事先に泊まるってさ。追い込みの仕事だって」
「追い込みかあ、それじゃあしょうがない……って、恵、勝手に出ないでよ」
「だってコウのパパさんじゃん、邪魔しちゃ悪いかなって思ってさ」
「あら、私は平気だったわよ。電話しながらフェラチオされる幸太君、見たかったな」
「恵、ありがとう」
美雪ならやりかねない。そう思うと恵の機転はむしろありがたい。
「どういたしまして」
「それじゃあ、今日はもう少し遊んでも大丈夫だよね? んーん、明日まで、平気でしょ?」
美雪はいやらしい笑いを浮かべると、ショーツを履きなおした。
***―――***
近くのコンビニでコンドームを買ったとしても、それは普通のこと。
例えば、これから行為に及ぶ男女がいたとして、セーフティセックスはセックスを楽しむ上で重要なことであり、恥ずかしがるほうがおかしい。それが男一人、女二人であったとしても。
ただ、幸太は別の理由で恥ずかしさを感じていた。
コンドームを買いに行くに当たって、幸太は自販機での購入を望んだ。しかし、自販機だと劣化しているものが混ざっていることもあると、美雪が反対する。
それでも渋る幸太に、二人はある提案をした。
「ねえ、恥ずかしいよ……」
「いいじゃん、似合ってるよ」
「だって、恵……」
それはよく使うコンビニの店員に彼とばれないよう、変装すること。
恵は幸太の服を借り、帽子を目深に被る。代わりに幸太は恵の大きめの制服を着せられた。メイクは母親のものを拝借し、薄っすらと見えていた髭のあともしっかり隠す。普段、化粧気の無い恵が手際よく彼を変身させると、仕上げに唇の光沢を出そうと紅を取り出す。
赤紫のルージュは恵のイメージに合わない。聞いてみると、「私がするんじゃない
んだ」と笑っていた。