恋愛の神様・後編-13
「貰ったからだよ」
「いや、ここ昨日開店したばっかだし、俺初めて来たし」
「祐希…」
「ん?」
「いた、神様」
「はぁ?」
「恋愛の神様」
『ありがとう、楽しめた』
一番最後に聞いたあの言葉。
ありがとうは、あたしが言うべき台詞。
とんでもない神様だと思ってた。祐希を女の子にしたりして、縁結びなんて嘘ばっかりって―
みんな神様が与えてくれた試練だったのかな。
あたしが祐希の幸せを願った瞬間、『合格』と聞こえた。
それは一番大切な事。
あたしはいつでも望んでばっかで与えた事がなかったから。
八代はそれに気付かせてくれた。
「帰ろ、実果」
そう言って手を差し出す祐希の顔は、夕日を浴びてとても綺麗。
「うん」
願い事を叶えてくれてありがとう、神様。今度の週末祐希とお守り返しに行くね。
ついでに邪魔者扱いした事を謝ってやるか。
『お前、ほんと俺の事嫌いだよなぁ』
そう言って笑う八代の声が聞こえた気がした。
おわり