憂と聖と過去と未来3-11
体育館に着くと、もうすでにクラスメイトは準備運動をしていた。
ちょっとまずい。
「あ、憂きた!」
「憂、どうしちゃったの?」
「あ、うん、お腹痛くて…あはは」
「大丈夫?無理しないようにね」
「うん、ありがと」
グループの子に心配されて罪悪感を感じたが、とりあえず作戦は成功。
チョコは無事、聖に渡すことができた。
「憂、袋を置いてこないと」
「あ、うん」
履き替えた上履きの入った袋を所定の場所に持っていく。
休み時間にたくさん走ったから準備運動はいいや、なんて考えながら歩いていると、後ろから声。
「柊さん」
もうさすがになれたのか、体は反応しなかった。
「なに?」
振り返ると、やはり佐山さん。
いつの間に背後に?
それを考えたときは、ぞくりとした。
「お腹痛いの?」
「うん」
先ほどの会話を聞いていたらしい。
「大丈夫?」
「……うん」
嘘をつけ。
グループの子は気付かなくても、あなたはどうせ何もかも気付いてるんでしょうが。
別に堂々とあなたの前で渡してもよかったんだよ。
でも、なんだか嫌な予感がしてやめた。
杞憂だったらいいんだけどね。
あとそれに、あなたの顔は、心配してるって顔じゃない。
会話はそれで終わり、あたしはグループに合流した。
今日の授業はバスケだった。
男女別れてチームを作り、授業が終わる時間までひたすらゲーム。
すでに卒業が近いためか、ここ最近は試験のようなものはなく、体を動かすための時間という感じだった。
あたしは球技もお手のものなので、張り切って動き回っていた。
ボールを受けては素早くドリブルで相手を抜き、ジャンプシュートを決めてチームメイトとハイタッチ。
特にあたしにとっては受験で鈍った体を動かすいい機会であり、とても楽しかった。
冷たい視線を感じつつも。