僕らの関係 学園祭-15
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晴天の霹靂とはまさにこのことだろう。上機嫌で帳簿を提出した由香だが、領収書の抜けを指摘される。急いで計算を合わせたものの、一度学校に納金される以上、一円たりとも領収書の漏れは許されないと突っぱねられた。
「もう〜なんでこうなるのよ……」
「しょうがないよ。えっと足りないのはどれだっけ?」
「あー、里奈のクッキーだ! おっかしいわね、ちゃんと貼っといたのに……」
「そういえば里奈ちゃん、また作るときに分量の参考にするからってレシート見てたっけ。もしかして……」
「えー……。んもう、あの子ってばホントお菓子以外にはだらしないんだから!」
「でも、どうしよう」
「里奈に言ってレシート持ってこさせないと」
「それがさあ、さっきから携帯繋がらないんだよ。何処いっちゃったんだろ?」
「あらら、しょうがないわね……、提出はあさってまででいいみたいだし、私がお店に言って頼んでくるわ」
「え、じゃあ……今日も?」
心底がっかりした様子でため息をつく幸太を見ると、それも悪くないと思えてしまう。
安売りする必要は無い。むしろ恋焦がれさせたほうが、彼の求める気持ちも強くなるだろう。現に今日はことあるごとに彼の熱い視線を感じたのだし。
「ゴメンね……」
手を合わせて拝みこむと、幸太も頷かざるを得ず、それでも下半身の憤りがおさまらないのか、ズボンの前はこんもりとテントを張っている。
「その代わり……明日はきっと……ね?」
「うん。わかったよ」
――素直な幸太ちゃんならきっと自慰も我慢するよね? そしたらすぐに射精してしまうかな。ならゴムも一つでは足りないかもね。そうだ領収書をもらう帰りにでも、箱で買おうかな。今後も使うだろうし……。
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一人教室にたたずむ幸太の手には、黄色と白の格子模様の布が握られている。
返しそびれたままのそれは、洗濯したあとにしっかりとアイロンをかけた。
酸味の強い匂いが失われたのは彼にとっても残念だが、それでも自慰の後の妙に悟った自分がそれを放置させてくれなかった。
結局精を抜けば汗も尿も愛液ですら、不快な匂いに過ぎない。
もし今日彼女と行為に及んでいたとして、その後に自分はどう彼女と接することが出来るのか、少し不安だった。
――僕は由香ちゃんのこと好きなんだ。けど、エッチなことしたいだけなのかな。
そうだったら、終わった後、嫌いになっちゃうのかな。そんなのやだよ。僕、ずっと由香ちゃんのこと好きでいたいのに……。
及ぶことのない行為に焦がれつつも、彼女がいないとつい弱気になってしまう幸太。
その思考が自分を誤魔化すための言い訳に過ぎないとしりつつも、幸太は今の状況を肯定しようとしていた。
短い振動が太腿に伝わる。携帯がなっているようだが、着信には倉沢とある。