僕らの関係 学園祭-10
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業務用スーパーでの買い物は既に必要なものを伝えていたらしく、店側が会計の準備をして待っていた。由香は支払いを済ませ領収書を受け取ると、一礼して店を出る。
時計を見るともう八時に近くなっており、通りを行く人もまばらで、皆一様に家路を急いでいる。
里奈は由香から買い物袋を受け取り、中身を確認する。一つ一つ指差し確認をする仕草は子供っぽいが、彼女のふわふわした雰囲気にはよく似合っている。おそらく彼女自身、それを理解したうえで演じているのだろう。
抜けているように見えて下準備を怠らないというか、根回しをする彼女を、由香は「あざとい」と評価している。
「ご苦労様。学園祭の日は期待しててね、里奈とびっきり美味しいクッキー焼くから」
「期待してるわ。でも、塩と砂糖は間違えないでね?」
「ユカリンまでイジワル言う。里奈、そんなことしないもん!」
「どうだかな、この前は結局味見させてくれなかったし、ほんとは間違えたんじゃないか? コウ、どうたっだんだ?」
腕を組んでジトリと睨む恵は、唯一味見をした幸太に証人喚問を行う。
「そんなこと無いよ。里奈ちゃんのクッキーは美味しかったよ」
にこりと微笑む幸太に言われると、それ以上は恵も追求は出来ず、「ふーん」とつまらなそうに言うだけ。
「コータ……。次も味見してね」
「うん、でもあんまり食べちゃったら売り物がなくなっちゃうかもね」
「たくさん焼くから平気だもん」
しばし見詰め合う二人だが、由香のコホンという咳払いが現実に戻す。
「あらあら仲がよろしいわね。羨ましいわ」
「そんなこと無いよ。ほら、もう遅いし、早く帰ろうよ。そうだ、僕皆のこと送ってくよ。暗いし、危ないからね」
わざとらしく声を張る幸太だが、女子と比べても背が低く、見るからに頼りない彼はむしろ送られるほうだろう。
「コウに送ってもらう? なんかその方が危なそうだな」
「ええっ! 僕はそんなことしないよ!」
真っ赤になって反論する彼に恵は目を丸くすると、ややあってから目を細める。
「そんなこと? あたしは別にコウが何か出来るなんて思ってないけど……、アブナイことする気あったの?」
言葉の意味合いを取り違えたと知る幸太だが、既に里奈も恵もあの日の課外授業のような視線になっている。
「ちょっと二人とも……、いいかげんにしないと幸太ちゃんがかわいそうだよ」
「かわいそうって、変なことしたのって由香だろ?」
「ユカリン、コータのアレ、アレしてたし……」
「うっ、それは……」