恋のきっかけは突然に 〜桜舞い散る夜〜-1
「クールビューティー」
私の第一印象をきくと、だいたいがこうかえってくる。
黙っていると怒っているみたいだとか、その猫みたいな目が睨んでいるように見えるだとか、とにかく話しかけづらいらしいし、冷たくあしらわれそう、らしい。
しかも緊張すると、また無表情になってしまうからよけいだ。
なるべくはそう思われないように笑顔に努める。
けれど、結構無駄な努力に終わっていることが多い。
望月さんに会ったときもすごく緊張していた。
亜紀さんに呼ばれてやってきた望月さんは、私にあまり興味がなさそうで、こちらはあまり見る事なく、二つ返事。
そのせいで、亜紀さんにしごかれていたけれど。
その間も私は、極度の緊張で、仏頂面。
しかも、蹴られていた望月さんに、心配の言葉を掛けるべき場面で、亜紀さんの蹴りを褒める始末。
後から考えてみたら、結構空気が読めていない。
でも、望月さんは、特に気にするでもなく、ふっと目を細めて笑っていた。
なんで笑っているのか、不思議に思って聞いてみると、天然なのかなって思って、と、また少し笑った。
変わった先輩。
それが、望月さんの第一印象。
たまにみかける望月さんは、大体がぼーっとしていて、心ここに在らずという感じだった。
亜紀さんと弥勒さんと三人でいたとき、望月さんってどんな人なのか聞いたことがある。
「朔は、つかみどころがなくて、いつもフワフワしてる、クラゲみたいなヤツよ」
「まぁ、たしかにいつも物思いに耽っているし、口数少ないからなぁ〜朔」
「あ、でも、なにげに後輩の女の子からは人気だったり!」
「なんだかんだいって、優しいからな、朔は」
「俺もいつもは冷たくあしらわれてるけど、へこんでるときとかは何気に傍にいてくれるし」
「弥勒は、朔大好きだもんね」
「なんてったって親友ですから〜あ、でも朔が恋愛の話とかしてるの聞いたことないな」
「弥勒にしたくないだけじゃない?」
「うわっ!亜紀さんひどいっ!朔と俺は親友であってですね!…!」
「ま、人畜無害なクラゲ男よ」
隣でワーワー騒いでいる弥勒さんを無視しながら、亜紀さんはそう言っていたけれど。
人畜無害。
―でも、クラゲって刺されると痛いんじゃないのかな、なんて思っていた。
一年経った今では、そのクラゲ感に馴染んでしまって。
特に話しかけるでもなく、私もぼんやりとしている。
心を開ける先輩。
でも、いつもぼーっとしている様で、実は周りに気配っていて、さりげなくみんなをフォローしてるんだ。
今日だって、花見でグデグデになったみんなを介抱している。