恋のきっかけは突然に 〜桜舞い散る夜〜-3
あの時、望月さん、二本もおしるこ飲んでたっけ。
ふふっと、思い出し笑いをしていると、
「どうしかした?」
不思議そうな望月さんの手にはおしるこ。
なんでもありませんよ?と、にっこり笑うと、望月さんはふっと目を細めて笑った。
あれから少しずつ、私は望月さんと居ることが多くなっていった。
ちらっと、こっそり覗き見をする。
色素が薄めで、こげ茶色の髪は、寝癖でクルっとはねている。
ピヨンとはねている、その寝癖が、かわいいと思ってしまう私。
何か物思いに耽っている横顔を見るのが好きだ。
彼が笑うと、とても穏やかな気持ちになって、私も自然と笑顔になる。
「というか、この原理の説明はわかったわけ? 」
「なんとなく。あ、そろそろ、お昼ご飯にしませんか?−-朔さん」
「なんとなく…って…ーーっ …びっくりした」
少し顔を赤くしながら、朔さんは顔をそらして、ゴロンと横になる。
「え?だって、望月さんがそう言うから、呼んだんですよ?」
「そういって、中々呼ばないのは誰?…弥勒は名前で呼ぶのにさ」
ふて腐れたように言う朔さん。
弥勒さんに対抗ですか、と、また笑っていると、グッと引き寄せられた。
「わわっ」
おでこに何か柔らかい感触。
気のせいかな。
そんなふうに思っていると、
チュッとリップ音をさせながら、朔さんは私のおでこにキスをした。
「へ!?」
「にぶい、にぶすぎる」
「…」
「あのさ、夕のこと、すごく好きだから」
朔さんは、少し顔を赤らめながら、そう言って、顔をくしゃっとして笑った。
ーそんな風に笑う朔さん、初めて。
これからは、もっとみられるのかな。
そうだったらいい、そう思いながら、目を閉じた。