多分、子供と妖精の話。-1
『多分、子供と妖精の話。』
西暦二〇〇二年 クリスマスイブ。
「あれれぇ? ネコさんがいるー」
「わっ!? 何故にプクトが見えるのです!?」
「ネコさんじゃないなら、ようせいさん? 白くてふかふかではねがはえてるよー」
「むにゅ。まぁ、慈愛がそう見えるならそれでいいのです。でも、プクトはプクトって名前なのですよ」
「あ、わかったぁ。ねむねむのようせいなんでしょ?」
「よくわかりませんが、よくわかったですよ。慈愛は何してるですか?」
「お母さんまってるの。木下先生と、おはなししてるんだよ」
「どんなお話なのです?」
「わかんない。メグのね、おなかのけがのことじゃないかなぁって」
「ありゃりゃ。交通事故ですか?」
「ううん。あのね、お母さんが……お、お母さんが、お母さん…! やだやだ!! メグ、なんで!!?」
「あ、あわわわ。わかった、わかったのです。むにゃ!?」
「……プクトって、ふわふわだねー……」
「むにゅ。まあ、抱っこぐらいならいですよ。……お腹の傷はお母さん、なのですか?」
「どうしてかなぁ? メグが生まれてきたことがだめだったのかなぁ?」
「……これはまた。救いのない話ですねー」
「スクイ?」
「そうです。プクト、本当はこんな話に関わりたくなかったのですけどねぇ」
「スクイのない話に?」
「うーん、まあ。多分、救いのない話じゃないかと思われるですよ」
「そっかぁ」
「いいのですか? 救いがないのは、」
「だいじょーぶ。メグにはお母さんがいるもん」
「……そうですか。そうですね……」
「あら、起こしちゃった?」
「…あれ? プクトは? あのね、白くてネコさんで、はねがあってふわふわで、ねむねむのようせいなの」
「そう。今日はイブだから、サンタさんのお使いで来たのかもしれないわね」
「でもね。なんかね、スクイがないんだって。ねぇ、スクイって何?」
「……そう。怖い夢を見たのね」
「どうして? こわくないよ。だって、お母さんがいるんだもん」
「そうね。そう。大丈夫。お母さんが守ってあげる。なんでも、怖いものからは、なんでも」
「おばけやかいぶつからも?」
「ええ。……絶対、守ってあげる。それにね、今日はイブだから。慈愛の好きなもの買ってあげるわ」
「ホント? じゃあ、じゃあね……メグ、ひみつきちが、ほしいな」