憂と聖と過去と未来 2-2
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昼休み。
今日は自分の分しかお弁当を用意していないので、いつも通り、普段一緒に行動を共にしているグループの女子たちと食事をとることにした。
あたしは一つ伸びをすると、鞄からお弁当箱を取り出して、教科書とノートを引き出しにしまってから席を立った。
するとタイミングを見計らったかのように、佐山さんが真っ直ぐあたしの方へ歩いてきた。
腕には二つのお弁当箱が大切そうに抱えられている。
「柊さん、私ね、篠塚くんと付き合うことになったの」
佐山さんは先ほど振り返って見せたように、相変わらず弾けんばかりの笑顔だ。
「うん、知ってるよ」
「あ、もう聞いてるんだ」
「朝も一緒に登校したんでしょ?」
「うん、勿論!篠塚くんって朝弱いんだね。なんかうとうとしながら歩いてて可愛かった!柊さんは篠塚くんのあんな姿を毎日見てたんだね」
佐山さんは得意気に話している。
「…そっか、彼氏と彼女だもんね」
あえて後ろ半分は流して答えた。
聖が朝弱いことなんて、もう10年以上前から知ってる。
「あ…だからこれからは私が篠塚くんを起こすし、お弁当も用意するね」
「…うん」
佐山さんは何の悪気もないようだが、あたしとしては正直気分が悪い。
なんだか終始、言い方がわざとらしく聞こえたのだ。
これは嫉妬…?
「あ、篠塚くんお弁当待ってるだろうから、じゃあね」
佐山さんはそれだけ言うと、駆け足で教室を出ていった。
おそらく二組に向かっているのだろう。
あたしは佐山さんが見えなくなるまでその姿を目で追うと、溜め息を一つ吐いてグループの中へと入っていった。