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春に生まれた彼女へ
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春に生まれた君  〜僕とおしるこ〜-1

「朔はさ、もしこのサークル内で彼女にするなら誰?」

「は?」



男というものは悲しきかな、こういう例え話が好きなようだ。
誰が一番かわいいやら、この子と付き合ったらどーだとか、男同士で盛り上がる。
ー男って単純だ。
窓の外の緑一色に染まった葉に、雨の雫がきらめいているのを見ながら、ぼんやりと考えていた。

「俺は夕ちゃん!」

―どうやら乗り遅れたらしい。

『たしかに夕ちゃんはかわいいし、亜紀さんと1、2を争うくらい人気だよなー』

『初めはほんと高嶺の花って感じだったけど、話し出すとまた結構ギャップがあって、またいいよなー』

『そーそー、結構天然じゃね?』

―確かに彼女は見た目とのギャップが激しい。
一見クールそうで、口を開くとほんわりしていて。
たぶん時折、顔をくしゃっとして笑う彼女が、本当の彼女なのかなと思う。
また、ぼんやりと考えていたら、さらに乗り遅れてしまった。
まぁ、乗り遅れているのはいつもの事だ。
そっと輪から抜け出し、キャンパスの中庭を歩いていると。




「望月さん!」

図書館の前を通った時、ちょうど夕が出てきたところだった。

「どこへ行ってるのですか?」

「んー、ちょっと休憩しにね 夕は?」

「私も一休みしようと思って」

「そっか じゃあ一緒に行くか」

「はいっ!」

夕は人懐っこい笑顔で勢いよく返事した。
目的の物を自動販売機で買い、夕用に買ったココアを渡してベンチに座る。

「やっぱり頭を使った後は甘い物ですよね〜」

「そーだな」

ふっと笑いながら、僕はおしるこの缶を開けて一口。

「あれ?望月さん、おしるこですか?」

「んー 何?こっちがよかった?」

「いえ!なんかいつもブラックコーヒーのイメージがあったので 甘いの好きなんですか?」

「そーだな 甘いのも嫌いじゃないし、結構おしるこは飲んでるかな」

「ふふっ おしること望月さんって、なんかかわいらしいですよ」

おしるこってみんな結構飲んでるんじゃないだろうか、と考えながら味わっていると、ふいに夕はプルっと身震いして、身を縮めた。
―やっぱり、昼は暖かくても、夜は肌寒いな。
何気なく、夕の方に近寄って寄り添うように座り直す。


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