恋愛の神様・前編-9
「祐希…?」
「実果、あたし―」
「ん?」
「八代に、告白してもいい?」
「―――――はっ!?」
一瞬息ができなかった。
何言ってんの?
告白????
それは、つまり、祐希が、八代を好き…って事!?
「お弁当ね、最初から八代にあげるつもりで作ったんだ」
はにかみながら話す祐希は、どっからどう見ても恋する乙女。
早起きして好きな人の為にお弁当を作るなんて、あたしだってした事ない。
「ねぇ、実果」
「…何?」
「正直に答えて」
「うん」
「実果は、八代の事好き?」
あたし?
八代を?
冗談でしょ!誰があんな邪魔な奴!!!!
あたしは素直にそう言えば良かったのに。
不安そうにあたしを見つめる祐希のまっすぐなまなざしが痛くて、スッと目を逸らした。
"親友と同じ人を好きになりたくない"
そう思っている事が手にとる様に分かった。
分かった上で、
「駄目!!」
そう叫んでいた。
「あたしも、八代が好き」
心にもない事を言うために。
だってもし祐希が八代に告白して、それで万が一うまくいっちゃったら、あたしはどうなるの?
祐希が女の子としての幸せを手に入れたら、このまま一生元に戻らないかもしれない。
あたしの隣にいるのが当たり前だった祐希。
八代なんかに渡さない。
それに祐希の事だ、ああ言っておけば親友に遠慮して告白なんかできない筈。
祐希はあたしのもの。
絶対、絶対邪魔してやる。
友達の恋路の邪魔をする。
それがどれだけ最低な事かくらい、いつものあたしなら分かっていた。
でも今は常識を考える余裕なんかない。
結局あたしは最低だ。
好きな人より自分の方が可愛いのだから―――
つづく