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恋愛の神様
【ファンタジー 恋愛小説】

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恋愛の神様・後編-1

午後の授業は完全に上の空だった。
有り得ない。
祐希が恋をしてる。
しかも相手はよりによってあの八代。

あたし以外の人を好きになってほしくなくて、自分も八代が好きだなんてとんでもない嘘をついた。
祐希以外の人なんか好きになるわけない。だけど嘘でもそんな事を言ってしまった事実に罪悪感がちらつく。

いいんだ、あたしは何も悪くない。
悪いのは祐希をこんなにした恋愛の神様と、八代なんかを好きになった祐希だ。
あたしは悪くない。
可愛そうなのはあたし。


その日の放課後、祐希は一人で帰ってしまった。




一人ポツンと帰り支度を整えていると、手を動かすより溜め息をつく速度の方がはるかに速いのに気付いて…、それに対してまた溜め息をついた。
何で声かけてくれないの?
いつも終業のチャイムと同時にあたしの席まで来てくれるのに。
祐希と付き合い始めてからこんな事初めてだ。
隣にいるはずの祐希がいなくて今は、…八代と二人。

「ち…っ」
「何舌打ちしてんだよ」

そりゃしたくもなるでしょ。何でこいつと肩並べて歩かなきゃなんないの?それもあたしを車道側に歩かせやがって、気の利かない男め。
こんな時、祐希だったら――

「シカトかいっ」

しかも何?帰る方向まで一緒なわけ?

「それもシカトかよ!」
「うるさい」
「別にいいけどさ。お前にシカトされたって痛くも痒くもないし」
「じゃあ一人で帰りなよ」
「用もないのにお前にくっついてんじゃねぇよ。俺は祐希ん家に行きたいの」

苛立ちのせいで早歩きだったあたしの足はピタリと止まった。
…祐希ん家?

「何しに行くの?」
「これ」

そう言って八代はカバンから祐希のお弁当箱を取り出す。

「あいつ今日さっさと帰っちゃったから返しそこねて」
「…洗って返しなよ」
「俺が洗うの?」
「あんたが食べたんでしょ」
「そうだけどさぁ」

ブツブツ文句を言う八代を置いて再び歩き出す。

「お前らが別々に帰るなんて珍しいじゃん」

八代のくせに痛いとこ突いてきやがる。

「あんたには関係ない」
「喧嘩でもした?」
「別に」
「お前ほんと俺が嫌いだよなぁ」
「まぁね」
「否定しろよ」
「事実ですから」
「あーそーですか」

あたしとしては八代を冷たくあしらってるだけのつもり。でも傍目には仲良く痴話喧嘩してるように見えたらしい。
八代を好きな祐希には特に。
見られてるなんて気付きもしなかったあたしは、帰宅後打ったメールに返信がない事に首を傾げるだけだった。


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