恋愛の神様・前編-8
その日のお昼休み。
あたしと祐希は向かい合わせに座ってお弁当を広げる。
その横には当たり前のように八代の姿。
「あんた友達いないの?」
嫌悪感丸出しで聞いてみた。
「冷たい事言うなよな」
購買で買ってきたらしいパンにかぶりつく姿につい舌打ち。
「八代がパン買いに行ってる間にどっか行っちゃえば良かったね、祐希」
「いいじゃん、実果。三人で食べれば」
「そうそう、みんなで食べようぜ。あ、それもらい」
あたしの唐揚げに向かって伸びて来る八代の手首をガッチリ掴んだ。
「あたしのおかず!」
「ケチケチすんなよ、二個入ってんじゃん」
「二個ともあたしの!!」
唐揚げを巡る醜い争いを止めたのは祐希。
「あたしのあげる!」
そう言って全く手をつけてないお弁当を八代に差し出した。
「おぉ、さすが祐希。優しー」
遠慮なく祐希のおかずをつまもうとすると、
「あの、全部いいよ。あたしパン食べたかったし!」
箸まで差し出して自分は財布を掴んで教室から出て行ってしまった。
…祐希?
「ラッキー、いたーだきます」
図々しく手を合わせる八代の額をグーで殴って、祐希の後を追った。
様子が変。
八代に弁当あげるくらいどうって事ないのに、何をあんなにどもって―――
「祐希!」
階段の踊り場で追い付いて名前を呼ぶと、立ち止まった祐希はゆっくり振り向いた。
「実果」
その表情に、あたしの心臓はドキン、と派手に音を立てる。
頬を赤らめて目を潤ませて、泣きたいのか笑いたいのか分からない複雑そうな口元。