シアワセサガシ-8
「…それはでき」
「って、聞こうとしてたの。大聖が来る前に」
私は大聖の言葉を遮った。大聖なら「それは出来ない」って言うの、分かってたから。
「大聖は…幸せ?」
大聖の手が私の後頭部をやわやわと撫でる。
「うん、幸せ」
大聖はそっと私から離れると顔を覗き込んで
「奏が笑ってるから」
と言った。
「私思い出したの。ずっと寂しくて私を幸せにしてくれる人探してたけど分かった」
「そっか。良かったな」
私は大聖に笑って見せた。
「大聖が幸せなら私も幸せ」
大聖も笑い返してくれた。
私が求めてた幸せはずっと身近に、常に側にあったんだ。
─14年前─
『じゃあ教えてあげるね』
『うん』
『あのね、誰かをシアワセにしてあげるんだって。お母さんが言ってた!』
『…どうして?』
『えっと、誰かをシアワセにしてあげると、心があったかくなってニコニコになるの。ニコニコしてるのはシアワセなの』
『へぇ…』
『うん、だからもう泣かないで!えっと…』
『かとうたいせい』
『私はこれながかなで!よろしくね』
『じゃあ僕、かなでをシアワセにする!』
『ふふふ、二人でシアワセになろうね』
『うん、ほんとだ。何か心があったかい』
『私も』
『シアワセってすごい!』
『ねぇ、たいせい。これから一緒に公園で遊ぼう?』
『いいよ。いこう』
自然と男の子は女の子の手を握った。二人で顔を合わせてにひひと笑うと、楽しそうに駆けていった。
End.