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シアワセサガシ
【幼馴染 恋愛小説】

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シアワセサガシ-4

小さい時から大聖はニコニコしていて、常に皆の中心にいた。
それに比べて私は友達が少なかった。
小学校に入るとその理由が私にも分かった。
直接何かされた訳ではないけれど、ヒソヒソと陰口を叩かれていたのは知っている。
少し消極的な私は事有るごとに大聖を頼った。
大聖になら何も気にせず話しかけれるという安易な理由だったけど、それがいけなかったらしい。
人気の大聖と仲の良い私に嫉妬でもしたのだろう。そこから根も葉も無い噂が一人歩きしたんだと思う。
それがとても悲しく、心臓が痛くて私は表面上の付き合いしか出来なくなっていた。ちゃんと話せたら良かったのかもしれないけど、そんな勇気、私には無い。
それを知ってか知らずか、大聖は一番、私と一緒にいてくれた。
愛想笑いが上手くなるばかりの世界で唯一、私が素顔を晒せる相手だった。
それは高校三年生になった今でも変わらない。
昔から、私が暗い顔をすると今もしているようにこうやって家まで手を握ってくれた。

「ねぇ、大聖はどうして手を繋いでくれるの?」

「んー、分かんない」

付き合ってる訳でもないのに手を繋ぐ。
周りに『そーゆー関係』と思われても仕方ないかもしれない。

「分かんないはダメ」

「えーとね、じゃあね…奏がいなくならないようにかな」

「私がいなくなる?」

「親父さんとお袋さん、まだ別居中なんだろ?」

ただ頷くだけで何も言えなかった。
私のお父さんとお母さんは数年前から別々で暮らしている。私はお母さんとアパートに、お父さんは転勤になったとかで会社の近くに住んでるらしい。お父さんの仕事の関係だとお母さんは言っていたけど、実際のところ本当かは分からない。
元々、お父さんとお母さんの仲が良かったのかも微妙なところだ。

「昔から奏はさ、内向的だったじゃん。親父さんたちが離れて暮らすようになってから、拍車掛かったっていうの?ずっと見ててもいなくなっちゃいそうで」

けらけらと笑いながらそんな話をする大聖。
「いなくなっちゃいそうで」と言われた瞬間、どくんと心臓が鳴った。
部屋で一人で踞っていると、まるで私は存在していないかのような気持ちになる時がある。そんな時、私はこのまま小さくなって最後には消えてしまうんじゃないかという気さえしてくるのだ。
それを大聖は感じてるんだ。
一瞬の驚きを気付かれたくなくて「ふーん」としか言えなかった。

「だからこうやって触ってないと不安なんだ」

そこで大聖は握る手に力を込めた。

「…そう」

また心臓が鳴った。
でも今度はさっきと違う。きゅうっと胸の奥を捕まれて、体の熱が頭の先まで走っていった。
でもその感覚は嫌いじゃない。
むしろ、もっと、感じたい。
だけど大聖は私の気持ちなんて知るよしもなく…。

「うん、そう!たぶん」

「たぶんて何よ」

「だぁかぁらぁ、俺もよく分かんないんだって!」

「もーバカァ」

苦笑いをする大聖の肩を小突いてやった。
大聖の手は好きだ。
子供が仲良しの子と手を繋ぐ、その延長みたいで。
手を繋ぐ行為に下心も嫌らしさも何も感じない。
ただ純粋に繋がっている。だから好きだ。


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