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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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やっぱすっきゃねん!VE-8

「1番レフト足立、2番サード乾、3番ピッチャー川口、4番キャッチャー山下…」

 いつもは、ライトで1番を任される佳代は名前があがらぬことに不安になった。

「7番センター加賀、8番ショート森尾、9番ライト澤田」

(9番って…)

 初めての打順に佳代は違和感を覚えた。

「相手の多島中学は、昨年の地区大会ベスト4の学校だ。
 今のおまえ達なら楽に勝てるハズだ。だから、守備力を固めたメンバー選出とした。
 途中からは大幅に入れ替えるから、ベンチスタートの選手もいつでも行けるよう準備しとけよ」

 威勢の良い声が永井に向けられて、試合前のミーティングは終了した。

「プレイボール!」

 15分後、多島中の先攻で試合は始まった。
 先発の直也は腕の振りも良く、三振ひとつを含めて3者凡退という素晴らしい立ち上がりを見せた。
 佳代は、ライトから直也のピッチングに見惚れていた。

(今日の直也、乗ってるな)

 ボールの勢いも当然だが、気持ちが全面に出ている感じだ。
 3アウトになり、ホッとしてベンチに帰ろうとする佳代に、

「カヨッ!ボーっと見てないで準備しないか!」

 掛けられた声が一哉だとすぐに分かり、センターに向かって頭を下げてベンチ前に走り込んで来た。

 円陣の中、達也の掛け声が響く。

「初回から好球必打!取りに行くぞ!」
「オウッ!」

 円陣全体から、勇ましい声が弾けた。

「何か言われたのか?」

 ベンチに戻った佳代に、直也が近寄り訊ねる。

「コーチに言われちゃった。ピッチャーとしての準備を忘れてるって」

 答えた左手にはボールが握られている。

「とにかく、使われるイニングをイメージしてろよ」
「分かった」

 佳代はグラブを持ってベンチの隅へ行くと、シャドー・ピッチングを始めた。
 直也は、その様子を“先輩ピッチャー”としての頷きをすると、ヘルメットを取ってグランドの方に向き直った。

 多島中の先発ピッチャーは右の横投げで、半身を大きく屈めてから身体を前に突っ込ませて腕を横に振ってくる。

(…あれって上野さんに似てるな)

 直也や達也だけでなく、青葉中のベンチの全員が相手ピッチャーに、昨年、自チームにいた先輩ピッチャーをダブらせた。

「バッターラップ!」

 1番バッター足立が右打席に入る。

(いつもの2番と違うから、何とか出塁して…)

 1番乾と2番足立を入れ替えは永井の考えだった。
 足立のボールを見極める目と乾の打力を組み合わせれば、より、初回の得点力が増すと考えたからだ。


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