投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 282 やっぱすっきゃねん! 284 やっぱすっきゃねん!の最後へ

やっぱすっきゃねん!VE-9

 初球、2球目と内角でストライクを取られた足立。

(こりゃ、ストライクはカットして粘らないと)

 一旦、外して素振りをすると、再び打席に入る。
 ピッチャーはセット・ポジションから、今度は身体を屈めずに素早いモーションから投げた。

 足立の身体がタイミングを合わせてステップする。
 強い腕の振りからボールが放たれた。ど真ん中。

(ヨシッ!)

 ステップした足が止まり、短く握ったバットがボールを捉えに振り出される。

(なっ!)

 ボールは急激に減速して低めに沈んだ。足立はかすりもせず三振になった。

「な、なんだ?あの球」

 青葉中のベンチは声が止まってしまった。皆、初めて見る変化に驚いている。
 それは、センター後方から試合を見つめる一哉も同様だった。

「こいつは驚いた。中学でシンカーを投げるヤツがいるとはな」

 中指と薬指の間からボールを抜くように投げ、順回転を掛ける変化球。

「さて、あいつらはどう攻略するかな?」

 一哉はメモに何やら書き込むと、いつものように笑みを浮かべてグランドに視線を戻す。

 2番乾は意表を突こうと、初球からバントヒットを狙った。が、ゴロがピッチャー正面に転がってしまった。
 3番、直也が打席に入る。

(決め球があの変化球なら、少し前に立つか…)

 いつもは、キャッチャーぎりぎりに立つのを30センチほど前に構えた。
 多島中のキャッチャーは、直也の位置を確認してサインを出す。ピッチャーは頷き、セットポジションに構えて止まった。

(さあ、早く投げろ)

 わずか2〜3秒の違い。だが、投げるタイミングをズラすことで、バッターの心理を揺さぶる。
 直也の集中が切れ掛けた時、ピッチャーが投球動作に入った。

(ヨシ、来い)

 微妙にズレたタイミング。シュート回転したストレートが内角高めを突いた。
 直也は小さなスイングからバットに当てた。鈍い金属音が残った。

「クソッ!」

 高く上がった打球を見て、レフトがゆっくりと前に出てくる。
 直也は上手くバットに当てたが、最初のズレからボールに差し込まれていた。

「あのキャッチャー、なかなかの策士だな…」

 3者凡退に終わった青葉中の攻撃を見て、一哉はまたメモ帳にペンを走らせていた。


やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 282 やっぱすっきゃねん! 284 やっぱすっきゃねん!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前