密心〜ぼたんあめ〜-2
「三好屋さま、わちきは舞いも芸も何一つ満足にできんせん。至らぬと思いんすが、ご容赦くださいまし」
そう頭を下げそれに応えた三好屋さまは快活に笑われた
「よいよい……わしはもう爺じゃ。精気もあるまいて!」
そう笑われる声に安堵した――のは一瞬のことだった
「ただのぅ…楽しませてはくれるよの」
パンッ!と勢いよく手を叩いた三好屋さまの後ろの屏風から男が現れた
とても用心棒に来たとはお世辞にも言えない
下品な笑みをにやにやと浮かべ男は着物を脱いでゆく
「…、何を……?」
「……交わりをのぅ、みせてくれればよいだけじゃぁて」
………何を言っているのだろう
それは遊廓でさえ禁忌とされているのに
「三好屋さま…それは、何を?!いや!やぁ…やだ…いやです!」
剥ぐように脱がされるのに抗い、そう叫べば頬を弾くように叩かれた
「黙らっしゃい!小煩い売女めが!」
「痛い…いやぁ……痛い!やめて!」
一切の触れ合いのないままに入れられ、そう嘆けば足蹴にされ素肌に煙管の灰を押しつけられる
じゅわっと自身の肌の焼ける音が頭に響く
痛い
熱い
くるしい
たすけて
誰かたすけて
「っあ…いたい……やぁ、ゆるして…ゆるしてください」
何に対してかもわからない……ただゆるしてゆるしてと許しを乞うた
処女でもあるまいのに何の労りもない交わりには血が溢れた
体は青赤紫……鱗ができたかのように肌は色が変わり、三好屋さまはまるで地獄浮世絵をまさか現でなされたいのかと思うほど酷い扱いをされた
「おぉ…これじゃこれじゃよいよい」
相も変わらず好好爺然とした笑みを絶やさぬ風貌はいっそ恐怖しか生まなかった
「誰かぁ…いゃあ!ゆるして!ゆるして!!助けてぇ…っ!!」
乞い続ける救いには、誰も応えてくれなかった
蔵ノ介さまに頂いた飴玉が……砕けているのを視界の端でみつければ意識が混濁していった
「……か!みそか!」
呼ばれる名に意識を引き戻され、肌に触れる手を咄嗟に振り払った
こわい、怖いこわい恐いこわい……
「……ゃ…っ!」
振り払った先には……牡丹姐さんが…牡丹姐さんがいる
「はぁ、…はぁ……ぁ、すみ…、ん、せん」
安堵すれば息を詰めていたのか荒いほどのため息が漏れた
辺りを見回しても牡丹姐さん以外おらず心底安堵して―