卒業〜少年の話-2
「じゃあな」
そう言って友と別れた道からまだ百メートルも離れてはいないだろう。
振り向くと、誰もいない。
道路と、街と、澄んだ空だけがあって。
その瞬間に解った。
卒業するということ。
過去になることなのだ。
仲間たちとはいつでも会える。
だが、
あの日、
あの時、
この道を歩いていた俺達に戻ることは、もうできない。
きっとこの思い出は、儚く美化されて。少しの痛みと悲しみを。そして、懐かしさを放ち続けるんだろう。
戻れない。この事実を知った瞬間に、何故だか涙が出た。
止まらなくて。
皆が悲しいと思った理由が、これに近いのかと思うと、確かに泣いてしまう理由も納得できた。
踵を返して、家路に着く。
この気持ちをどうすればいいのか解るほど、大人ではないから。
風が、涙の跡に少しだけ染みた。