卒業〜ある二人-2
中学からの付き合いは大学を卒業しても続いた。
初めての一人暮らし。最初に選んだ条件は安い家賃で、二人で暮らし易い場所だった。
大学の試験は大概一緒に勉強と言いながら、部屋でお互いに抱き合っていた。
おかずの味付けなんていう些細な理由で大喧嘩もした。
俺とこいつは似たもの同士だったのだろうか。謝るときはお互いに一緒のタイミングで謝り、謝らないときはお互い謝らずにうやむやにして。
ふとした時に思い出してはどちらからともなく謝って、笑っていた。
「なんで別れたんだっけ」
彼女の台詞に意識が戻される。煙草は、もう根本のフィルターまでを焦がそうとしていた。
「どっちから言ったんだっけ」
彼女はそう言うと軽く微笑んでいて。この顔をしたときのコイツは大概悪戯を思い付いていた。
コイツは知っている。どっちが切り出したか。
「お前だろ」
彼女は軽く笑うと正解と呟いた。
「なんでかな、もうわからなくなっちゃった」
その声色には、何がこめられている。昔ならば、その意図を読むことが出来たか。
否。
今となっては、それすらも幻想だったのかもしれない。
ただ、俺は知っていた。
俺とコイツが、とても似ていたということを。
「なんかさ」
言葉を切り出した彼女の口から漏れた息が、白く霞む。
きっと、俺とお前が似ているのならば、同じことを考えている。
だから、その先の言葉を奪う。
「俺達は、多分深いところまで似ていたんだ」
彼女の瞳が震えた気がした。
もう今の俺には分からないが、それでも、それでも言えるはずだ。
君と俺は似ているのだから。