密心〜かみのきみ〜-2
返される返事にそう安堵し……やはり同時に、遊女としては客をとらねばならぬのだと分かってはいたが怯えた
私はまだ蔵ノ介さましか知らない
優しい、優しい蔵ノ介さましか知らない
だから恐ろしいのだろう
幸せという日々が
「みそか、甘味の君はまだ来ぬの?飽きられぬようにね」
そうころころ笑いながら片手を差し出す金魚姐さんに、甘味を分け差し出して苦笑を返した
もうすっかり姐さん方にはみそかに片手で菓子と決まってしまったらしい
「あら。美味、美味。今度は何とゆう菓子?みそかも知らぬの?」
「はい。知りんせん」
「今度聞いてみんさいな。わちきも旦那にねだりたいよのぉ。頼みんすね、みそか」
そう快活に笑って私の髪を撫でると、しゃらりしゃらりと簪を鳴らし禿を引き連れ金魚姐さんは奥の座敷に去っていった
今度
私の今度はまた必ず蔵ノ介さまなのだろうか
知らぬ誰かになるのではなかろうか
先日渡された菓子は僅かしかなく……これで次まで持とうか怪しいものだった
姐さん方に分け与える習いができたのもあろうが少ない菓子は数えれば数えるほどどこか心細く、喉を通らなかった
事実、――なんとか
私にしてみればそんな心地だった
なんとか……蔵ノ介さまだった
私の次は、ちゃんと蔵ノ介さまであった
会う度に蔵ノ介さまは安堵を共に連れてくる
去るときは不安を置いてゆくとわかっていて私はその安堵にすがる
「みそか…」
「蔵ノ介さま…」
会う度吸われる口づけは初めは戸惑ったけれど今は手慣れたようになった
「ぁ……はぁ…っ」
離れた唇の間に銀糸が流れ劣情を煽られた
感覚としては慣れても心は慣れぬままなのだ
合わさるだけの時もあれば味わい食むような口吸いもある