『あたしのビョーキ』-24
「ふーん。そうなんだ。あ、もしかしていつもみんなの着替え、ヤラシイ目でみてたりします?」
「ふむ。その疑問はもっともだ。だけど体は女なんで、自分の見れば済むよ」
さすがに自給自足するつもりは無いけどね。
「先輩、スタイルいいですもんね……って、今遠回しに私の身体、バカにしましたね? いいもん、子供っぽくても。今に先輩よりずっと女っぽくなるんだから」
唇を尖らせる瑠璃。あの薄紅色ってさ、ちょっぴり酸っぱい唇は柔らかくて、くっ付けると、わけワカンネーほど気持ちよくなれる不思議な粘膜なんだよね。
隙あらば食べちゃいたいけど、監視員の目もあるし、これ以上彼女に嫌われたくない。
「ね、先輩、今私の唇見てたでしょ」
「ん? ああ。ゴメンな。あたし、ヤリたい盛りだからさ。まあアレは無いけど」
下心を見透かされるのは何度されても慣れない。ていうか、なんであたしってそんなに見抜かれるんだろうね……って?
「島田ちゃん?」
「瑠璃です……」
目を瞑った瑠璃の顔があたしの前にあった。そして唇にそっと触れる程度の感触。
プールで冷えた身体ではあまりそれを楽しむことが出来ないけど、でも、すぐに熱を帯びだす。気になったのはほのかに香るシトラスの香り。
「ど、して……?」
「先輩、シトラス好きでしょ」
いや、シトラスは嫌いだよ。いやいや、そうじゃなくて……、
「キス、いいの?」
「えへへ。一人じゃできないし」
「そりゃ、キスは二人でするもんだけど……」
「それに、自分で慰めてる先輩なんてやです。他の人とするのはもっとやです。今はまだわからないことばっかりですけど、でも、きっと私、先輩のこと慰めてあげます!」
あたしの二の腕を掴む彼女はおめめをパッチリ開いて力説する。なんだかあたしの方が圧倒されてしまうよ。
でも……、
「慰めるって……どういうこと?」
「やだ、先輩のヘンタイ!」
それだけ言うと瑠璃は大きく水しぶきを立てて水中に潜り、そのまま潜水を始める。
「あ、待て!」
あたしも急いでそれを追うけど、色々水の抵抗があるせいか、水中では彼女に追いつけそうにない。
だけどそれでいい。
彼女はきっとあたしが追いつくのを待っていてくれる。
だからあたしだって彼女が追いついてくれるのを待つんだ。
焦るな、あたし!
完