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『あたしのビョーキ』
【同性愛♀ 官能小説】

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『あたしのビョーキ』-23

***―――***―――***

「次、木皿! もっと気合いれろー、島田、ぶつかっていけ!」

 体育館に響く石井の声は凛として、西川内のバスケ部員の低血圧なテンションをしっかり底上げしてくれる。それに部員も次の新人戦でこの前の雪辱を果たそうと、気合が入っている。

 だけど、約二名、ちょっぴり動きが硬いのもいる。
 一人は木皿サン。なんだか目の下にクマを作りながら、〆切がどうとかうわ言のように呟いているけど、なんのことだろう。

 もう一人は……。

「島田ちゃん、もっと気合いれてこ」

 あたしは俯きがちな彼女の背中をぽんと叩き、あまり意識していないように振舞う。
 島田ちゃんはキョトンとした様子で顔を上げるけど、それはあたしの背後でやってくれ。今は練習に専念すべきでしょ?


 練習が終わった後、あたしはプールに直行した。
 汗を流せるのもそうだけど、夏休み中に五回行かないといけないのだ。まったく面倒な宿題だよ。
 背泳ぎしながら空を見る。太陽はさんさんと輝いて、雲ひとつ無い。
 皆はカラオケ行くと言ってたけど、一緒に行けばよかったかも。
 まいいか、由香でも里奈でも誘ってどっか行けばいい。それともコウを誘って飯作ってもらおうかな。なんだかんだいって料理作るの好きみたいだし。

「先輩」

「うわっと!」

 目の前にぬっと現れた瑠璃に、あたしは溺れかける。

「先輩、大丈夫ですか!」

 溺れたあたしを抱き起こそうとする島田ちゃんに掴まれ、変な方向に力が入り、さらに溺れてしまう。

「ちょ、放せ! がぼがぼ……」

「きゃあ!」

 こうなったら一蓮托生だ。あたしは島田ちゃんの水着をひっぱり、水中に引きずり込む。彼女もおどろいたらしく、必死に空を目指す。けど、若干冷静になれたあたしはそれを許さず、柔らかな太腿を引っ張る。
 二人で溺れあうと、水中に白い泡がいくつも立ち、渦ができる。

「はいそこ、フザケナイー」

 昼時とあって他に誰もいないけど、上から聞こえた監視員の声は、明らかにめんどくさそうだった。


 プールサイドに手をついてたゆたうあたし達。身体中に浮遊感と緩やかな水温が伝わり、背中を照らす太陽の視線が心地よい。

「先輩、やっぱり怒ってます?」

 おもむろ口を開く島田ちゃんに、あたしは冷静を装う。

「なにが……かな?」

 でも、内心では波で心音が伝わってしまうのではと思うくらい動揺している。

「だって、この前途中で」

「しゃーないよ。島田ちゃんはノーマルさんだもん。あたしとは違う」

 彼女も気にしてるんだ。そりゃそうだよね。

「先輩ってやっぱりレズなんですか?」

 直球ですな。

「んー、ちょっち違うかな。なんていうか、自分のこと男だと思ってるとこあるし」

 難しい言葉だと、性同一性障害とかいうらしい。詳しく診断されたわけじゃないけど、多分そうだ。


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