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『あたしのビョーキ』
【同性愛♀ 官能小説】

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『あたしのビョーキ』-17

「島田ちゃん、落ち着いて……」

「だ、って……せん……ぱい」

 息をしているのに、何故か苦しそうになる島田ちゃんは尋常な様子じゃない。
 もしかして過呼吸? こうなった場合の応急処置なんか知らない……いや、そういえば、袋とか被せるのが応急処置だっけ。
 保健の授業で見せられたビデオを思い出し、あたしは島田ちゃんをベッドに押し倒し、身動きを封じ、そのまま生意気そうにプックリ突き出た口に唇を重ね、呼吸のペースを抑える。
 彼女は再度目をしばたかせるけど、あたしはお構い無しに彼女の首の裏を持ち上げ、気道を確保する。ついでに鼻も塞いで。

 あたしに合わせて、島田ちゃん。そう、ゆっくり、いい? 焦っちゃダメだよ。

 二、三回繰り返したあと、ようやく島田ちゃんも冷静になり、異常に早かった呼吸も収まり始める。

「ゆっくり、落ち着いてね……」

「は、はい……。ふー……、はー……」

 一緒に深呼吸をしてあげると、彼女もだすっかり落ち着きを取り戻したように見えた……が、

「キス、されちゃいました」

「キスって、これは人工呼吸だってば」

「だって、唇と唇が触れ合ったじゃないですかぁ……。私の初めて、先輩に奪われちゃいました」

 頬に手を当てうっとりする彼女だけど、さっきまでと様子が違くね? 散々人のこと不潔とか言っておきながらさ。

「瑠璃って呼んでくれませんか?」

 島田ちゃんってそんな名前だったんだ。そういえば難しい漢字だったからうやむやにしてたっけ。

「はいはい、瑠璃ちゃん瑠璃ちゃん……って」

 いつの間にか眼前に迫る彼女に、あたしは言葉を失う。

「瑠璃、すごく悔しかったの。だって先輩、あたしのこと、後輩としか見てくれないし、それなのに六番の人とは……」

 一人称を自分の名前にする奴なんて、頭のねじが抜けた里奈みたいなやつぐらい。

「先輩、気付いてない? 瑠璃、いつも恵のこと見てたよ? 試合中も、練習中もずっと、たまにお友達と一緒になって遊んでるのに嫉妬したりしたけど、でも、瑠璃、恵にキスされたらぽわーってなってね、それで、もう恵になら何されても平気ってなっちゃって……」

 けれど瑠璃っていう、特殊な名前を聞いていると、彼女の言うぽわーっていうのが頭の中に湧き立つ。
 なんだか最近のあたしってついてるんだかわからないや。でもま、据え膳食わぬはなんとやら。瑠璃もそういってることだし、いいよね?


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