『あたしのビョーキ』-15
練習後は体育館の掃除にかこつけたモップ片手の鬼ごっこ。本格的な掃除は業者の仕事として、いわゆる練習後のお遊びだ。
石井は練習のときは厳しいけど、そういうのに寛大で嬉しい。人間、力の入れ方、オンオフは重要だしね。
「待て木皿!」
あたしは床を磨きながら木皿サンを追う。
「ふふふ、神速スプリンターの木皿様に追いつけるかな!」
「てめ、逃げ足だけはえーな。つか、なんで陸上やらないんだよ」
「ああいう汗臭いのは嫌いなのです」
「バスケもクセーよ」
「バスケはいいの。だってス○ムダ○クとかかっこいいもん」
「てめ、いくつだ!」
「復刻版だもん!」
これだから隠れオタクは……。
「先輩たち、遊んでないで真面目に掃除してください!」
コートを走り回るあたし達に飛んできたのは島田ちゃんの怒声。つか、いつもは一緒になって遊んでるのに、どして?
「どしたん、島田ちゃん」
あたしが駆け寄ると、なにか汚い物でも見るような目を向けて後ずさる。
「なんでもないです、それより早く終えて帰りましょう」
「なんだよ、つれないね……あ、わかった! あの日だ!」
あたしのデリカシーの無い一言に、四方八方からモップの先が投げつけられた。
***―――***―――***
練習の後、あたし達は近くのコンビニでオヤツを買ったりする。中にはカラオケ行ったりプールに行く子もいるけど、あたしはパスだ。今日は親が遅いし、コウに飯作ってもらいに行かないといけないから。
んで、島田ちゃんだけど、さっきからずっとついてきて、遠巻きにこっちを見てる。
いったいなにが悪かったんだろう。そりゃ生理の日だとしてもさ、そこまで怒る必要ないじゃん? 第一女の子には誰でもあるんだしさ、そんなことで一々怒っていたら身がもたないよ。
「なあ島田ちゃん、どうしたの?」
いたたまれなくなったあたしは再度彼女に話しかける。ついでに肩をがっちり掴んで逃がさないようにして。