『あたしのビョーキ』-14
「相手の誘いにはまっちゃって」
ある意味ファール四つだよ。
「でも、かなりやり手な子だったわ。全国レベルじゃないでしょうけどね」
へー、全国とは大きく出たね。
「するんですか? バスケ」
「あら、こう見えても二年のときには全国いったわよ? 当然スタメンで」
「へー、それはそれは……」
「疑ってるでしょ? これでも新聞に載ったんだけどな。地方紙だけど」
地方紙? 二年のスタメン? どこかで聞いたことあったような……あ、思い出した。石井が切り抜き持ってきたっけ。小さかったら高く飛べを地でいく娘だとかいって……。
それ以降、石井はバカの一つ覚えみたいにそれを連呼して、ランニングの最中にも斉唱させられた。つまりこいつのせいか。
「知ってます。顧問から聞きました。あ、でも東北のほうじゃないでしたっけ?」
「転校してきたのよ。こっちに」
「バスケしなかったんすか?」
「私が来た頃にはもう負けちゃってたわ。まあ入る気もなかったけど」
「なんでですか?」
「だって、私が入ったら他の子がスタメンオチするでしょ? どうせ負けるにしても、これまでがんばってきた子を応援したくならない?」
「あたしは勝つことの方が大事だと思います」
あたしは実力主義だし、そういうこと言ってると勝てないって知ってる。
「でも、一人ががんばって勝てるスポーツじゃないしさ、それに思い出を作れるのってそんなにないと思うの。でも、心の中にしっかり残るものがあれば、ちょっとぐらい寂しくたって我慢できる。そういうの、誰でも一つぐらいあったほうが良くない?」
「そんなの甘えです」
なんでかしらないけど、むしょうに腹が立った。ていうか、思い出なんかいらないよ。あたしの「たけり」を諌めてくれる奴はいないんだから!
「そう、厳しいのね。えっと……」
「赤城恵。西川内中二年です」
「そ。私は阿川美雪。もしかしたら再来年あたりは一緒にバスケするかもね」
***―――***―――***
夏休みに入ったら連日練習だ。
朝連がある日はそのままお昼まで。午後からの日はそのまま夜まで。
十六時間おきとはいえ、蒸し風呂状態の体育館でバスケ漬けはかなりきつい。でも、心の中のわだかまりというか、持て余した性欲を誤魔化すには丁度良かった。
受け子には試合で借りを返すつもりだし、それまでにもっと自分を磨かないとね。
だけど、なんでか島田ちゃんの機嫌が悪い。
紅白試合ではフリーにも関わらずあたしに全然パスしてくれないし、ストレッチも付き合ってくれない。
あたし何かしたかな。そりゃふざけたふりしてチューしようとしたけどさ、冗談じゃなくて本気だよ……、それがまずいのかな?
島田ちゃん、ノーマルだよね。都合よくレズ子じゃないよね。普通の子は見た目女の子同士ってヤだよね。好きになる前に諦めよ。つか、なんで最近のあたしってついてないの?