『あたしのビョーキ』-12
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崩れ落ちる彼女をあたしは抱いていた。このままもう少しいたい。けれど、騒がしくなる外の様子に邪魔される。
「なんだろ? 外、うるさいね」
「多分他の部が帰ってきたんだよ。今日はサッカー部も野球部も練習試合あったっぽいし」
他校のスケジュールに詳しいわけじゃないけど、大河原は運動部への力の入れようが違うから、休日はどこかしらの運動部が試合をしてるらしい。そういえば中学に上がるころ、わざわざ学区外の大河原にいった子もいた。公立中学で引き抜きするなんてやりすぎだっつうの。
「となると、誰かくるかもしれないじゃん。見つかったらやばいね。逃げよっか」
「そだね」
イタズラっぽく笑う芳江にあたしもにひひと笑い返し、急いでジャージを羽織り、リュック片手に更衣室を出る。
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更衣室を出たら不安要素はない。そりゃ他校の生徒がうろちょろしてたらこのご時勢、多少は問題あるだろうけどさ、多めに見ろよって話だ。
隣を歩く芳江はまだ絶頂の余韻があるのか、あたしを見るたびに「バカ」と照れ隠しする。
いかんなあ。涎が零れちまうよ。だってさ、人生十四年を経て、ようやく趣味を共有できる子が見つかったんだよ? あたし、この先もずっと処女、童貞のまんまかと思ったけど、これからは……。
あはは。今日はもう無理だけど、来週の今頃、いや、土曜なら母さん達もいないし、あたしの部屋につれこんでさ。今度はあたしも楽しませてもらいたい……。
「芳江ー」
後方より芳江の名前を呼ぶ声あり。振り向くと、ボール片手に爽やかマンがやってくる。
「たっくん!」
たっくん? 知らないなあ、そんな男。
「芳江も今帰り?」
「うん。たっくんは?」
「俺はまだ練習あるけど……悪いから先帰っててよ」
たっくんとやらはあたしのことをちらりと見た後、申し訳なさそうに言う。けど、先帰っててよってなんだよ。まるで芳江が自分の持ち物……。
「んーん、練習終わるまで待ってる」
目を輝かせて頷く彼女に、あたしは理解した。
まあ、あれだ。火遊びって奴?
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帰り際、芳江は番号交換しようといってきたけど、あたしは適当に四桁教えて別れた。
つか、見事な誘い受け。それどころか浮気ですかい。なんだよ、そんなに男が良いかよ。たかがチ○コがついてるだけだろ? あれでされるとそんなにいいのか? あたしの手でイッたじゃん。
んでもあたし、イッてない。
なんだかやるせない気持ちになったあたしは、まっすぐ帰る気になれず、近くの公園でブランコに揺れていた。
どうしよう。つか、どうしろっつんだ。この気持ち。
受け子の顔が浮かぶたびにむしゃくしゃする。しかも、可愛らしいアヘ顔でさ。憎めないよね、あんな可愛い顔見せて爪たててくるんだもん。釣り逃がした魚はでかすぎる。いやマジで。