『久遠の絆~現代〜平安編~』-5
〜生まれてくる子供と〜
螢は俺の腕に頭を乗せ、一糸纏わぬ姿で緑の褥(しとね)の上に横たわっている。
静かな二人の呼吸が重なり、また離れていく。
『私……赤ちゃん、ほしいな』
俺と螢と子供の三人で暮らせたらと言う螢。
俺もその意見に同意する。
子供は女の子で、名前は『薙』がいい。
優しくて、暖かくて、そして芯の強い、螢のような女の子。
夢のような話をしていると、陽が傾き始め少し冷えてきた。
俺は螢に護符を手渡し、そろそろ帰ろうとその肩に手をかける。
が、その時茂みからガサガサと微かな物音が……。
気配は鹿などの獣のものではない。
俺が気付いたのを知ってか、そいつはそこを動こうとはしなかった。
俺は螢を屋敷まで送り届け、その場を後にした。
〜魔獣ヌエの強襲〜
螢の屋敷から、ひたひたと後をつけてくる不穏な気配。
三人の盗賊らしき人影。俺は待ち伏せし、すらりと刀身を引き抜く。
連中は一斉に襲いかかってきたが、残り一人になると潮時とばかりに逃げ去る。
腑に落ちない連中の中途半端な攻撃……
ただの時間稼ぎか!?
俺は螢の身に危険を感じ、彼女の屋敷へと走る。
静寂に包まれていた螢の屋敷。
張り詰めた気を一瞬緩めかけた時、意識を失った螢を背に、白い魔獣が舞い降りた。
俺は咄嗟に護符と一緒に掴んだ太刀で一閃する。太刀は弾かれたが、魔獣は螢を地面に取り落とした。
急いで螢と魔獣の間に割り込み、彼女を庇いつつ改めて巨大な体躯へと目を凝らす。
ヌエだ……。
過去幾度となく、多くの犠牲者を出した狂獣。
太刀はその厚い毛皮に阻まれ、まるで通じない。
俺は絶体絶命まで追い詰められたが、飛び掛かってきたヌエに印を切り、水平に構えた太刀で五方星の中心を貫く。
手応えは得たものの、俺はヌエの体当たりを喰らい、気を失った……。