あごがすきなんです。-3
わ、こっち向いた
その人は私と目が合うと、少し照れたように笑って控えめな会釈をした
あぁ、今の角度もすごく良い…なんて素敵なラインなんだろう…!
「あれ、もしかして新入生の子?」
半ば我を忘れて美しい顎に見惚れてしまっていた私は、突然の背後からの声で現実に引き戻された
異様に近いところから聞こえた声に振り返ると、ほとんど密着している距離に男子学生が立っていた
び、っくりした…
私がすぐに離れてお辞儀をすると、その人は慣れた様子で微笑み返してきた
「もしかして入部希望?」
私の意識はついついその人のあごにも集中する
彼のあごは---本当に失礼なのだけれど---私の一番苦手な形だった
たった今、個人的に最高のラインを持つ人を見てしまったからか、いつもはスイッチを切っている私の「あご査定の目」が作動してしまい、私の脳内には失礼な感想が渦巻いた
「ん?どしたの?」
「うぅん…?
…あっご、ごめんなさい!なんでもありません」
…じろじろ見て、馬鹿っ
彼の声で我に返り、全力で自分を叱咤する
私は面食いではないから、顔が良いとか悪いだとかはあまり分からないし、気にしないけれど…こんなの、見た目で判断してることにかわりはないわけで、とても失礼だ
あぁ…つい査定しちゃった、反省…
みゆきが項垂れている私に声をかけるまで、私の一人反省会は続いた
…結局、そんな感じで私が落ち込んでいるうちに、二人で「映画鑑賞部」に入ることになってしまっていた