人を愛するために(DQ[―主×ゼシ)-5
「置いてかないで。」
彼女の紅く染まったほっぺたに涙の滴がぼろぼろ零れていく。僕はゼシカの想いを噛み締めながら、心を込めてキスをした。潤んだ緋い瞳が僕を真っ直ぐ見つめる。
ああ、そうだ。いつだって、ゼシカは真っ直ぐで強くて……脆い。
「僕、ずっとそばにいるよ。」
ゼシカは返事の代わりにコクンと頷いた。
「もし死んだらおばけになって、君が死ぬまでそばにいる。」
彼女は目を大きく見開き、瞬きを一度だけした。ぽろりと最後の涙が落ちる。
「…絶対、よ?」
君は悪戯っ子のように笑った。僕は、腕と脚でゼシカをぎゅうと抱き締めて、おでこにキスを繰り返す。
「今日、ね。」
「なぁに?」
もう落ち着いたようで、ゼシカの声はいつも通りに戻っていた。
「初めて、闘っているみんなを見たんだ。」
「……。」
「僕は、一人じゃ何にもできないって思った。みんなに、助けてもらってたんだ。」
今頃気付くなんて、やっぱりリーダー失格だなぁ…。ため息をついたところに、ゼシカの両手が僕の顔を包んだ。ぐいと向き合わされる。
「痛…。なぁに?」
今まで泣いていたはずの君は、眉をきりっとつりあげて。
「誰だって一人じゃ何もできないわ。でもね、エイト。私たちはあなたがいるから、安心して頑張れるの。いつもいつも、エイトが前を歩いてくれるから。」
そこまで言うと、ゼシカは押し黙ってしまった。謝ろうと口を開いた途端、柔らかいものが僕の唇に触れた。
初めて彼女からしてくれたキスだった。
「あたし…は、エイトのこと頼もしく思ってるわよ。」
俯きかげんに頬を赤らめるその姿が何とも愛しくて恋しくて。
「ゼシカ。」
もっともっと近くに抱き寄せる。このまま一つになれたらいい。
「大好きだよ。」
耳元で優しく囁くと、ゼシカは耳まで真っ赤になった。
「エイトのえっち!」
腕の中でじたばたもがく彼女を、もう悲しませないように、しっかりと抱き締めた。
ねぇ、ゼシカ。
あの日の君の温かさを、忘れてしまいそうでこわいよ。
もう一度、もう一度。
君に触れることができたら、絶対に忘れないのに。