投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

人を愛するために(DQ[―主×ゼシ)
【二次創作 恋愛小説】

人を愛するために(DQ[―主×ゼシ)の最初へ 人を愛するために(DQ[―主×ゼシ) 2 人を愛するために(DQ[―主×ゼシ) 4 人を愛するために(DQ[―主×ゼシ)の最後へ

人を愛するために(DQ[―主×ゼシ)-3

トロデ王とミーティア姫は、いつも街の外で待っている。王の風貌が魔物そっくりだからだ。以前にそれが元でトラブルが起こり、それ以来お二人は街の中に入らないようにしている。
一国の主と姫が、こんな仕打ちを受けるなんて。せめて、僕が代わりになれたら良かったのに、といつも思う。
「エイト。」
ミーティア姫の声が聞こえた気がした。
「えっ?」
俯いていた顔を上げ、姫を見上げる。翡翠色の瞳は、少し寂しさを帯びていた。
「エイト。今日は、どうしたのだ?」
「あ…。王様、申し訳ありません。急がなくちゃと思って……。」
僕がそれだけ言うと、トロデ王は温かいレモネードを一口啜ってから話し始めた。
「…どうやらおぬしは思い詰め過ぎとるようだな?わしとミーティアのことなら、心配いらん。エイトよ、自分自身のことをしっかり考えろ。」
僕自身の…?
悲しげな馬の嘶きが、黄昏の中に吸い込まれ、消えた。
「今、何を考えておるのだ?」
「僕は…今、王と姫の呪いを解きたいと思っています。」
驚くほど、さらりと言葉が出た。
トロデ王は目を細め、人差し指で顎を撫でながら言う。
「そうかのう?それは本っ当〜の本当にか?」
「本当の本当にです。」
「本当の本当の本当にか?」
「……王様。いつまでやる気ですか?」
僕が制止すると、王は「バレたか。」とくつくつ笑ってカップに口をつけた。
「いやな。」
レモネードの水面に、王の顔が映る。
「わしらはドルマゲスの呪いで、人あらぬ姿にされた。だが、おぬしだけが呪いにかからなかった。…それだけのことじゃて。」
水面が揺らめいて、王の顔が消える。
「余計な気を遣うでない。…おぬしだけが背負う問題ではないぞ。」
ぽんぽんと緑色の手が僕の肩を叩く。その手は、人であった時の王様と同じに温かく、それが余計に悲しくて、目頭が熱くなった。
「たまには、わしらに甘えてみろ。」
同意するようにミーティア姫が目を閉じた。長く黒い睫が、ふるふると揺れていた。
その瞬間、何かが弾けたような気がした。僕を縛り付けていた何か。
僕は一気に立ち上がって、王と姫に敬礼した。
「では、行ってきます!」
返事も待たずに、くるりと踵を返して、街へと走った。
「ミーティアよ、あれにも愛する女性ができたんじゃな…。」


夕暮れの風が頬をかすめる。身体が軽い。このまま、どこまでも走っていけそうな気がする。
ゼシカに会いたい。さっき、ミーティア姫の瞳を見て気づいたんだ。僕は、君の瞳に涙が溢れるのを見たくない。笑って。……ねえ、笑って。

宿屋に着いた頃には、食事の支度が整っていた。おいしそうな香りが鼻をくすぐる。まだ誰も手をつけていないようだった。
「…ヤンガス、入るよー?」
控えめにノックして、そっとドアを開く。案の定、彼は高いびきを上げて寝ていた。起こすのもかわいそうだし、ご飯だけ取っておこう。今日は強行スケジュールだったからなぁ。
そのまま、ククールの部屋へ進む。ゼシカが居るかもしれない。ちょっとだけ、自分の身体が強ばるのが分かった。
トン…トン
「開いてるよ。」
思ったよりはっきりした声だった。少しだけドアを開いて顔を出す。ゼシカはいなかった。内心ほっとしながら、ククールの方を向く。
「僕。」
「声でわかる。……入れよ。」
まだ身体がだるいんだ、と彼は気丈に言った。顔色も少し戻ってきたみたいだ。幾分か安心してベッドの傍にある椅子に腰掛ける。
「その、今日は……ごめん!」
頭を一気に下げる。
ふわりとククールの手が上がる気配がした。僕は次に来るであろう衝撃に、首をすくめた。


人を愛するために(DQ[―主×ゼシ)の最初へ 人を愛するために(DQ[―主×ゼシ) 2 人を愛するために(DQ[―主×ゼシ) 4 人を愛するために(DQ[―主×ゼシ)の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前