【私のビョーキ】-1
夏に向けて日差しも強まる今日この頃、私は一人公園のブランコに揺れていた。
時計はお昼を回った頃だというのに、私にはまるで覇気が無い。なんだか失職中の中年男性みたいに何度もため息をついている。
けど、これでもうら若き中学三年生なのだ。
本当なら今頃授業中なのに何でこんなところにいるの? 今年は中学受験もあるというのにサボっていて平気なの? 内申書ってまだあるんだし、あんまりおかしなことしないほうがいいのにね。
でも無理。
教室にいると息が詰まる。
だって友達、いないんだもん……。
連休の終りに転校してきたばかりの私はクラスに居場所がない。
最初はなんとか友達とか作ろうと思って行動したんだけど、受験を控えている皆は新しいお友達を受け入れることより、英単語や数学の公式の一つ覚えるのに必死なの。
それはしょうがないと思うけど、やっぱり残酷な時間がある。
皆が楽しくなさそうに問題集とにらみ合っていても、たまの息抜きには友達と楽しくおしゃべりしてるもの。
だけど、私だけカヤの外。
特に勉強が出来るわけでも無いし、特別美人ってわけじゃない。
スポーツは結構いけるけど、もうそんな時期じゃない。
あーあ、ツマンナイの……。
「おばちゃん、そこ俺のブランコだよ」
ちょっと誰よ。私はまだ十五よ。おばちゃんなんて呼ばれる年じゃないわ!
「こら! こんな可愛い女の子に向かっておばちゃんはないでしょ!」
私はついムキになって声を荒げるけど、声の先にいたのは小学生くらいの男の子。
目がまんまるで子犬みたいに可愛らしいのに、眉がきゅっと尖ってお怒りの様子を伝えてくる。鼻の頭に擦り傷みたいのがあるけど、なんだろう? 転んだのかな?
まあ、確かにこの子から見れば私もおばちゃん……なわけないわね。そんなに離れていやいないだろうし。
見知らぬ、といっても近所に知り合いなんていないけど、謎の少年は私のブランコのチェーンを引っ張ると、ぐらぐら揺らし始める。抱えていた鞄が落ちそうになるので、私はチェーンと鞄を必死に掴む。
「ちょっと、やめなさいよ。怒るわよ!」
「へーんだ、もう怒ってるじゃん。怖いんならさっさと降りろよ」
「何よ、別にここは君の公園じゃないでしょ? っていうか、君のものじゃないでしょ?」
「俺は君なんて変な名前じゃないぞ。ちゃんと……島本秋雄って名前があるんだぞ」
「なら私にだって名前ぐらいあるわ。阿川美雪っていう可愛らしい名前がね」
「美雪だって、だっせー名前」
あんまり否定はしない。だって、私もそんなにカッコイイと思わないし。でも、やっぱりださいと他人に言われるのはカチンとくるな。
よーし、ここは一つ大人の怖さを教えてあげないとね。そうじゃないとろくな男にならないわ!
「そう、ゴメンね、秋雄君。君のブランコに乗って……」
私は出来るだけしおらしく振舞い、ブランコを降りる。