【私のビョーキ】-21
「やだよ。秋雄がいなくなるの、やだよう……」
私は泣いてた。鼻水垂らして、情けないくらいに顔をくしゃくしゃにしてさ。
なのにアッキーは顔色一つ変えないの。やな感じ。二人でメソメソしようよ。私ばっかり恥ずかしいじゃない。
……でもまあ、いいや。最後だし、アッキーを困らせちゃえ。さあどう出る? 生半可なことじゃ私は泣き止まないわよ?
「美雪は泣いていいよ。ずっと泣いてて」
「なんでよ。慰めてくれないの?」
意外な答えに、私は逆に泣き止んでしまう。むしろ、罠に嵌められた気分だ。
「だって、泣いててくれたら、美雪がどこにいるかわかるでしょ? 俺が大きくなって、美雪のことお嫁さんに出来るようになるまで、ワンワン泣いてて。その時はきっと慰めてあげるから」
「何よ。それじゃあ干からびちゃうわ」
この子はバカだ。けどいいバカだ。だから待っていたい。
「私泣かない。替わりに笑う。そして秋雄が釣られて笑いに来るのを待つんだ」
「それでもいいよ」
「でも、あんまり待たせたら……」
乳首をいじくりながらイジワルをいってみる。でも答えはきっと……、
「攫いに行く」
薄い胸板に寄り添う私の頭をアッキーはしっかりと抱いてくれた。
まるでダーティーヒーローだ。けど、他の恋人の前から攫われるのもいい。
あはは、やっぱり私は悪い女ね……。
もてる保証は無いけどさ……。
***−−−***
私は久しぶりに学校をサボった。大切な日だもの、しょうがないじゃない?
旅立つ彼はお父さんの車の助手席から顔をだし、連絡先を聞いてくる。私は渋るふりをしながらメールアドレスと電話番号を書いた紙を渡す。
「俺、あっちに着いたら一番に連絡するよ。待っててね、ユッキー」
「うん、待ってるから」
「それでさ、夏休みとか、きっと来るんだ。ユッキー、その時は受験終わってるでしょ? また皆で公園で遊ぼうよ」
「んーん、公園では二人だけだよ」
私は意味深に微笑むけど、運転席のお父さんはそれを笑って見てるだけ。
知らないだろうけど、お宅の息子さん、身体ばっかり大人ですからね?
「それじゃあ阿川さん。僕らもこれで……」
「はい。ひきとめちゃってすみません。だけど、またね、アッキー」
私が彼に手を振ると、アッキーは思い出したかのように手を叩く。