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thoroughbred
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thoroughbred-9

***

「そろそろお昼にしよう!私がおごるね」
「え、そんないいですよ!」
「いいんだよ、当てたんだからおごらないと」
「じゃあ…ご馳走になります」
桃絵さんはそう言って俺の手を引くので素直に言うことをきいた。

競馬場には売店だけでなくレストランもあって、充実した設備にまたも驚いた。
しかも、後から聞いたところによると、子ども向けのアスレチックや公園もあるらしい。

二人はレストランでパスタを食べながら、またも競馬の話で盛り上がった。
「光一くんは、さっき選んだ馬の名前覚えてる?」
「あ、いえ」
「馬にもちゃんと名前があるから、できるだけ覚えてあげてね。何度か競馬に行くと、あの馬また走るんだ、とか、あの馬にはタイトルがかかってるから応援しよう、とかいろいろ楽しみが増えるからね」
これも興味深い話だった。
「桃絵さんも応援してる馬とか、好きな馬とかいるんですか?」
「うん!」
「じゃあ俺も、応援したい馬を見つけます」
「その意気だよ」
そんな話をしながら笑いあった。



***

そのあとも競馬を続けた。
俺は結局トータルで負けているけど、いろいろな買い方を試して勉強していった。
桃絵さんは違う種類のマークシートを使っていて、何度かその後も当てていた。
今度行くときは、マークシートについても教えてもらおう。
まだ先の予定なんて決まってないのに、俺は勝手に先のことを考えていた。


そして、メインレースのある時間が訪れた。
他の客も心なしかそわそわしている気がする。

周りがそんな状態の中、桃絵さんは今も俺に笑いかけてくれている。


告白しよう。


俺は静かに決心した。


だけど、桃絵さんは競馬が好きなんだ。
普通に告白するより、桃絵さんが好きな競馬で告白しよう。

このときの俺は何を考えていたのかわからないが、確かにそう思っていた。


「光一くん?メインの締め切りがきちゃうよ?」
やはり桃絵さんも、今までになく気合いが入っているようだった。
メインっていうのはやはり本気で挑むものらしい。
「あの…桃絵さん」
「なに?」
「このレース、俺は単勝一点勝負しようと思います。だから、それで的中したら…」
心臓がバクバクと忙しなく動く。

たしかに出会ったばかりだけど…
俺も桃絵さんと同じように…
競馬が好きなんだ…


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