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thoroughbred
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thoroughbred-8

***

そしてついにゲートが開かれ、俺の初の競馬が始まった。

外で馬が走るのを見ようと思ったが、今日は雨が降っているので場内のモニターで見ることにした。

初めて手にした馬券は、なんだかかっこよくてドキドキした。
たった100円の複勝だったが、やはり当たってほしい。

馬が続々とコースを走り抜ける。
「なんだかすごく楽しいです」
ふと横に立っている桃絵さんを見て言う。
「うん!私も楽しい!」
そんな会話を交わしながら、お互いモニターに視線を戻した。
そして最後のコーナーを曲がって直線に入ったところで、場内にどっと歓声が上がった。
「っ!」
皆興奮して、うおお!だったり騎手の名前を叫んだりしている。

その声に鳥肌が立った。


そしてゴール。

恥ずかしいが、速すぎてよくわからなかった。

「競馬ってすごく熱いですね」
「うん、うれしいよ、わかってもらえる人ができて」
桃絵さんのその言葉で、自分は特別だという優越感を感じた。


やっぱりこんなに綺麗だし可愛いのに…
今まで競馬のことを話せる人がいなくて寂しかったんだろうな…

俺はじっとその手に握った馬券を見つめていた。



***

ほどなくして結果が表示される。
「どう?」
桃絵さんはニコニコしながら俺の馬券を覗いてくる。
また顔が近くてドキリとした。
「あ…当たりました!複勝ですけど」
俺の選んだ馬が二着になったのだ。
「よかったね!おめでとう!」
桃絵さんは出会った日のように俺の手をぎゅっと握った。
「も、桃絵さんはどうでした?」
「私?私も当たったよ!しかも三連単!いきなりツイてるかも!」
桃絵さんも興奮しているようだ。
「三連単?」
名前は聞いたことがある。
「三連単っていうのは、一着から三着までに入る馬を決めるんだけど、その着順は自分が予想したとおりにならないといけないの」
「え!それってすごいじゃないですか!」
「うん、一番難しい買い方だからね」
その言葉に、俺は思わず桃絵さんの手を握りかえしてしまった。
「おめでとうございます!」
「うん!ありがとう!」
桃絵さんは顔を赤くしていた。

その後、すぐに配当金がモニターに表示された。
「えっと…13番の複勝…140円」
値段を見て、さすがに正直、ちょっと残念な気分になった。
「さっきも話したけど、人気がない馬ほど配当金が高いの。光一くんは二番人気の馬だったからそんなものだね」
「はは…まあお金儲けなんて考えてないですから、これでいいのかもしれませんね」
「うん!楽しむのが第一だからね」


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