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死の真相
【ホラー その他小説】

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死の真相-2

 目が覚めたのは、丁度自宅に着いたときでした。ぼうっとしながらも、凄い夢を見たもんだと苦笑してましたが、家に入るなり電話が鳴ったんです。病院からで、父が脳卒中で倒れたから直ぐ来るように、という内容でした。ええ、そりゃあ慌てましたよ。あと、ついさっき見ていた夢との関連性にぞくりとも来ましたけどね。病院に再び向かうと、お医者様が、今夜が山、と仰ったんです。ドラマみたいでしたね。

 母はずっと泣いていて、その肩をずっと抱いていましたよ。私ですか? 私は、父を失うのが怖いやら、さっきの男達のことが思い出されて怖いやらでずっと震えてました。

 え? はは、確かに、話の流れから言って父は助かるんですよ。はい、ホッとしましたね、あの時は。それこそ、奇妙な男達の夢を忘れるくらいでした。でも ね、飲み物でも飲もうと病院の外に向かったら、いつも山田ヒロシさんの見舞いに来ていた彼女が目を真っ赤に腫らして泣き崩れてたんです。立ってられないみ たいで、両親に支えられながら車に乗せられると、直ぐに病院を出て行ってしまいましたよ。確信めいた嫌な予感しましてね、看護師さんに聞いてみたら、山田さん、亡くなっていたらしくて。それも、その日にですよ。男達の予告通りでしたから、卒倒してしまいそうでした。さあ、複雑骨折が原因で死ぬとは思えませんし、山田さんは若かったので…… もしかしたら、父と同じ脳卒中で死んだのかな、なんて考えたりしましたけどね。

 でも、常識で考えたら、そんなことあるはずがないんですよね。だから、あの男達に山田さんを売った、なんてことで罪悪感を感じる必要もないはずなんですけど、でも気がつくとそのことを考えている自分が居て…… 貴方なら、どうしますか。やはり、自分の大事な人のためなら赤の他人なんて売ってしまいます か。……はは、失礼でしたね。こんなことを聞くのは。いや、すいません。忘れてください。ええ……大丈夫です。

 その後、嘘みたいにあっさり父は回復しまして、それから退院が決定したんです。早く仕事に戻りたい、父は母にそう言っていたらしいです。父も山田さんが 病室から居なくなったことに気付いたみたいですけど、私は何となく父に山田さんの訃報を伝えるのが憚られて、結局言えず仕舞いでした。それから、家に帰って、普通の生活に戻ることになったんですが、一ヶ月くらい経ってからでしたか……父が亡くなってしまいまして。いえ、事故です。交通事故。十字路で、信号無視のトラックに横から突っ込まれたんです。……即死、そう聞きました。

 その後は忙しくて、実のところ記憶が曖昧なんですよ。私も母も、憔悴していましたから。それに、あの時期のことは思い出したい記憶ではないんです。はは、すいません。余計な気を遣わせてしまって……

 そうそう、こんな話を知っていますか。中国に、叔父に育てられた青年が居た。ある日、叔父が病に倒れてしまう。青年が必死の看病をする日々を過ごしてい ると、ある日夢に二人組の男が現れた。その男は手に台帳のようなものを持っており、青年に叔父の命を引き取りに来たと告げる。青年は必死に男達に叔父の助命を求める。すると男達は同じ名前の人間がお前の住む県にいれば助けられると言う…… そう、私の見た夢と一緒なんですよ。しかも恐ろしいことに、その青年は同姓同名の人間が思いつかず、同じ名字の人間を男達に告げるんです。そして叔父は助かる…… 話はそこで終わりです。……ええ、貴方の仰る通り、できすぎですよね。でも、本当にあったんです。私自身、不気味で不気味で、その話を知ったときはそれは驚きましたよ。父が死ぬ少し前に知った話なんです。

 でも、本当に怖くなったのは、それから、父が死んでから暫く立って落ち着いたときでした。……ねえ、考えてみてください。その青年の叔父は、その後も長生きできたんでしょうか。ひょっとすると、その後すぐ死んでしまったんではないでしょうか。……父はね、殆ど車の運転はしないんですよ。免許こそ持ってますけど、母と出かけるなら殆ど母に運転は任せて、自分一人で出かけるときは電車か徒歩でしたから。何でも、免許を取り立ての時に結構大きな事故を起こしたとかで、それがちょっとしたトラウマになっていたみたいです。父が亡くなった事故の日に、父は近くのデパートに一人で出かけていたんです。いつもなら、電車で行くデパートに一人でね。

 だから、私はこう思うんです。あの日、あの十字路に、山田という名字の人間がいたんじゃないかって、そうね。


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