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死の真相
【ホラー その他小説】

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死の真相-1

 三年前の夏にね、父が倒れたんですよ。いえ、まだ五十歳でした。頑丈な人でして、風邪になったところさえ、一二回しか見た記憶がないんです。だからその父が倒れて私も母も驚きましたよ。

 ええ、直ぐに救急車を呼びましてね。病院に運ばれていったんですが、極度の過労とお医者様に言われましたよ。家に帰ってくればふざけた顔で冗談を飛ばしてばかりいる父でしたから、まさかそんなになるまで働いていたなんて全然知りませんでした。ええ、ショックでしたね、その時は。

 とりあえず、一週間ほど入院することになりまして、父は嫌がったんですけどね、母が許さなかったんです。はは、確かに父は母には勝てませんでしたね。気の強い母でして、根拠のない自信家で、私も何度となく困らせられましたよ。一週間の間、母は休日以外はパートに出ていますから、私が病室に顔を出すことに なったんです。勿論、私も大学がありますから一日中病室にいるって訳にはいきませんでしたけど、事情を話してサークルはお休みさせて頂いて病院に通いましたよ。実は、私一浪してまして、そのせいで両親に心配をかけた上に一年分の予備校代を払わせる羽目になってしまって…… 孝行したいときに親はなし、という格言を父の入院で実感しましたから、精一杯世話をして孝行しておきたかったんです。

 同じ病室に、山田ヒロシさんという方がいらっしゃって、大学の話をしていたのを漏れ聞いたので私と歳が近いと思います。その山田さんは、なんでも車に凝っているらしくて、入院の理由は交通事故で足を複雑骨折したから……とこれも会話から漏れ聞こえたことなんですけどね。私の名字も山田ですから、ちょっ とした親近感はありましたよ。え? いや、仲良くはなりませんでしたよ。父とは年が離れてますし、私とも趣味嗜好が違う方でしたから。山田さんは髪も染めてらっしゃいましたし、車も好きで派手好き。病院には毎日彼女が見舞いに来てましたよ。はは、それに対して私は見ての通り髪も黒いし彼女だっていませんか らね。

 父が入院して四日経った日に、私は病院に迎えに来てくれた仕事帰りの母の車に乗せられて外食をしたんです。そしてゆっくりと食事をしたのですっかり日が 落ちて夜になったファミリーレストランからの帰り道に、助手席でうたた寝をしたんですよ。そうしたら、変な夢を見ましてね……

 ふと気付くと、目の前に二人組の男が立っていたんです。風景はちょっと覚えてないんですが、男達の服装はなんだかこう、ひらひらとした、袴や浴衣に似ている黒っぽい服を着てました。もしかすると、中国の服かもしれません。服装については今でも思い出せるんですけどね、どうにも男達の顔が思い出せなくて。 顎が突き出ていたとか、目が少し離れていたとか、そういった特徴が無くて、なんだか不思議な男達でした。

 片方の男が、何かの紙の束を持っていたんです。男がそれを開いて、紐でまとめられているのが見えましたから、きっと手帳の類だったんだと思います。そうすると、手帳を持っていない方の男が、「明日、お前の父親、山田マサツグは死ぬ。その迎えに来る前に、その旨をお前に伝えに来た」って言うんです。はは、ばかげた話でしょう。まるで死神ですよね。でも、夢だから私はそれを信じ込んでとにかく焦りましてね、必死にまだ孝行をしていないから父を連れて行かないでくれって頼み込んだんです。なんだかこういったことを話すのは照れますね。ええ、そうしてずっと頼み続けたら、「お前の父を救ってやっても構わないが、 明日には山田マサツグという人間が一人死ななければならない。お前の父親が入院している病院に、もう一人山田マサツグという同姓同名の人間はいないか」と淡々と言ったんです。随分とあっさりこちらの頼みを聞いてくれるんだなとは思いましたけど、こっちも必死でしたから、入院患者の名前を思い出していったんですけど父と同じ名前の人間なんて記憶に無くって、それで随分冷や汗を掻きましたよ。

 あ、話の筋が分かってしまいましたか。ええ、そうです。困りに困ったものですから、男に、「同じ病室に山田ヒロシという同じ名字の人がいますが、その人では駄目でしょうか」と言ってみたんです。すると、ちょっと考え込んだ後に、「それでいいだろう」とだけ言うと、すっと消えてしまったんですよ。それから、一度もそういった夢は見てません。


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