やっぱすっきゃねん!VD-5
翌日。
朝練のランニング。皆が険しい顔で走っている中、佳代と加賀だけは嬉しそうだ。
昨日、精華中学との練習試合で2人の好守によって得点を許さなかっただけでなく、攻撃でも追加点に繋がるヒットを打つ活躍をする事が出来たからだ。
練習試合も予定の20校のうち10校を消化した。佳代も加賀も、残りの試合で昨日同様に活躍したいと願っていた。
朝の軽い練習を終えて皆が整列すると、いつものように永井が夕方の練習内容を伝えた。
「夕方のランニングだが、スパイクで走るのを止める」
「エッ?」
部員達は不可解といった顔をしている。永井はフォローするように言葉を続ける。
「体幹を鍛えるの新しいトレーニング方法だ。新しい靴は全員分買ってあるから、今後はそいつでランニングを行え」
話も終わり、整列が散り々になった。佳代も着替えに保健室へ向かおうとしていた。
「カヨッ!ちょっと待て」
永井が呼び止める。佳代は、また新たな特別メニューを言われるのかと身構えた。
「な、なんでしょう?」
「おまえの特別メニューだが、今週で終わりだ。来週からレギュラー組に合流しろ」
佳代の表情が一気にほころんだ。
「ハイッ!ありがとうございます」
「それと、藤野コーチの伝言だ。“ロープ昇りだけは続けろ”だ」
「分かりました!」
一礼して校舎へと走って行く。そんな姿に永井は目を細めた。
夕方。
「それじゃ25,0のヤツは?」
キャプテン山下達也は、整列する部員達に声を掛ける。新しいランニング靴の配給作業。
サイズ別に6つのダンボール箱が前に置かれ、各々が自分のサイズの靴を配っていた。
「25,5のヤツは?居ないか」
達也の声があがった。1年生全員と2年生の半数ほども靴を受け取っていた。その時だ。佳代が慌てて列を離れた。
「エッ?」
達也は佳代の顔を見た。その瞬間、ひったくるように靴を受け取ると、また慌てて列に戻った。
だが、直也や淳は彼女の行動を目ざとく見ていた。
「女子で25,5って…オレと0,5しか違わないのか」
「身長180のオレでさえ27,0だぜ…」
直也と淳のコソコソ話が佳代の神経を逆撫でする。