reality ability‐第8話‐刻印・【真】‐-10
「ごめんね。貴女の姿を少し借りさせてもらうわ。それとこの記憶も一時的に封印と改ざんさせてもらうわ。‥‥“来るべき時”まで待ってね。‥‥ごめんね。」
そこで記憶は終わっていた。織音はその記憶を半透明の姿で眺めていた。
「‥‥‥」
そして、考えていた。
《‥‥確かに“私が言った事”は覚えている。それが“偽り”でこれが“真実”‥‥。解らない事だらけ‥‥。》
色んな事で頭が混乱している織音。すると、辺りが眩しく輝き出し始めた。
「!?」
次は最後に神城家に訪れた時の記憶だった。神城家に向かう途中の事だ。織音はフード付きのローブをいつも通りに羽織っていた。
やはり目の前に人影が現れる。次は零歌だった。彼女は木に寄り掛かっていた。織音に気が付くと彼女はいつもと変わらない笑顔で近づき始める。
織音は警戒するように身構えた。すると、彼女は喋り出す。
「こんにちは〜。天神 織音さんだよねぇ。‥‥悪いけど、“運命”を変えないために貴女にはここで眠ってもらうわぁ。」
零歌はさっきと同じように指をパチンと鳴らした。またまた睡魔に負けじと目に力をいれた。
「‥‥ふ〜ん。耐えれるかしら?」
また零歌は指をパチンと鳴らした。やはり次第に閉じていく瞼だった。それを確認すると零歌は織音へと姿を変えた。
すると、彼女は織音へと歩く。織音の頭に触れながら喋る。優しく傷付けないように。
「‥‥記憶を改ざんさせてもらうね?もう聞こえないかな?じゃあねぇ。」
やはり、そこでこの記憶は終わっている。しかし、これから解った事が1つだけあった。どちらも皇希に関する事だった。
《‥‥皇の事。【真実】とはこれの事。だから、何?解らないわ。‥‥》
また辺りが眩しく輝く。次はより一層に光る。織音は思わず目を閉じてしまった。
‐現実世界‐
織音は目を開けた。皇希が即座に喋る。
「おはよう。‥‥気分はどうだ?」
皇希の表情はいつもと変わらないが笑顔も少しだけ感じられた。
「‥‥悪くないわ。けど、良くもないわ。」
織音は天井を見つめながら言った。複雑な心境なのだろう。
「‥‥1つだけ聞きたい。戦った女性は何か言ったか?」
皇希は依然として椅子に座っている。心配している素振りは見せなかった。
「‥‥‥‥。“あの娘”の事をよろしくって言っていたわ。」
織音は少し考えて答えた。彼女が言った通りの言葉だった。
「‥‥そうか。」
2人は黙り込んだ。部屋は静寂な空間になる。