未完成恋愛シンドローム - 目覚め --19
「ーっ！」
構わず立ち上がろうとすると、足元にも撒かれた液体に足を取られ、転んだ。
「なんやねんっ、これっ！！」
「ローションってヤツ」
コタローはそう言って、空になった容器を投げ捨てる。
「・・ローション？」
「・・・・ほんまになんも知らんねんな、イヴって」
いつもの薄ら笑いでもなく、ほとんど無表情のままでコタローが風呂場に入ってきた。
「・・・・」
「そんなに嫌やったら、シャワーで洗い流したらええんちゃう？」
コタローの提案に、前に居るコタローに注意を払いながら、後ろ手でシャワーの蛇口を捻り―
「ひゃっ！！」
いきなり冷たい水が降ってきた。
慌ててシャワーを止め―
―グイッ
「！！」
「いきなりシャワー出したらそら冷たいわな」
腕を掴まれ、頭上で固められる。
タイルの上に座り込んだ体勢からじゃ、ほとんどなにも出来ない。
それでもコタローのことを睨み付けたまま、身じろぎする。
「イヴ」
空いた方のコタローの指がオレの顎に触れ―
「ちゅっ」
「ーっ？！」
キスされた。
「ちゅむっ」
「んう、むっ」
コタローの舌が、口唇を割って中に入ってくる。
咬みきってやろうかと思いながら、何故か血の味を思い出してやめた。
「ぁむ・・・ちゅっ」
「ふ、ぅむ・・んふ・・・っ」
―息が、出来ない・・・。
「ちゅるっ」
「んぷはぁっ・・はぁっ・・・」
口唇が離れ、盛大に息を吸う。
「鼻で息吸えばえーのに」
そう言いながらコタローが笑う。
「うっさい・・なんでお前、こんなキス・・・」
いつの間にか、戒められていたオレの腕は開放されていた。
それでもさっきのキスのせいで、身体から力が抜けている。
「アメリカの子供って、ドラマとか映画でキス覚えんねんで」
意味不明なことを言いながら、ニマッと笑うコタロー。
「理由なってないし・・・それにここはアメリカじゃ、んむっ」
「ちゅっ」
また、キスされた。
「ふっ、ん・・・ぐっ、んむっ」
「ちゅっ、ちゅぷっ、れろ・・・ぁむ」
口の中をコタローの舌が自由気ままに動き回る。
不意を着かれたのもあって、さっきよりも早く息が続かなくなる。
―空気・・・っ、息出来・・！
バーストしかけた頭の中で、さっきのコタローの言葉を思い出す。
「ちゅっ、・・・ん？」
「んくっ・・・んふぁっ」
コタローの口唇が離れた。
「出来たやん、鼻で息」
どうにかこうにか、キスで口が塞がれてる時でも鼻で息が出来た。
「だったら・・なんやねん・・・」
それでも、途中までほとんど息継ぎなしだったせいか、息は乱れたままだった。
「なぁイヴ？」
「あ・・？」
お互いの息が掛かる程近い距離に居るコタローを睨み付けていると、不意にコタローが口を開いた。