AH! MY GODDESS ラストストーリー-14
『そしてベルダンディー……。その大罪により、一切の力を剥奪し、人間界に追放するものとする。』
『あ……ありがとうございます神様……。』
『馬鹿者!罰則に礼を言う奴があるか!まあよい、そして最後に森里螢一よ……。今までの功績を考慮し、記憶の消去に罰を軽減する。以上だ。』
天界の長が言い終わると淡い光が二人を包んだ。ベルダンディーの女神の象徴である、額と頬の紋章が次第に消えていく。やがて、能力を抜き取られたベルダンディーは脱力感に膝を付き、そして螢一は気を失って倒れる。
『しかし、不思議な人間だな。こうまでも女神に愛されるとは……。ただ、最後に気掛かりなのは……』
『ウルドのことは私に任せなさいな。』
長の言葉を遮り、ヒルドは言った。
『そうだな。お前に任せるべきなのだろうな……』
そう言い残し、天界の長は空の彼方へ姿を消した。
(ああっ女神さま!より)
天界の長が消え去る直前、ヒルドとの間で他の誰にも聞こえない会話のやり取りがあった。
(全く素直じゃないんだから……)
(何がだ?)
(あなた、私が来ることをどこかで期待してたんでしょう?)
(馬鹿なことを……)
(あの娘がどういう行動を取るか、わかってたくせに……)
(………)
(都合が悪くなると、すぐ黙るんだから……。変わってないのね、ふふふ)
(ウルドのこと、どうするんだ?)
(わかってるでしょ?私達の子供なのよ?それに、久しぶりに母さんって呼ばれて嬉しかったわ。)
(まったく、お前には敵わないな……。私も旅立つ娘に、ささやかな祝いも出来たし、天界に帰るとしよう……)
(そうね……。たまには二人きりで会いたいわね、あなた……。)
(機会があればな…)
長の消えた空を見つめ、ヒルドは小さく笑う。
『ホントに素直じゃないんだから……。私も人のコト言えないけどね。ほらウルド、起きなさい……とっくに目を覚ましているんでしょう?』
ヒルドに言われ、バツが悪そうにウルドは目を開けた。
『今回のコト、貸しにしとくわ。素直過ぎるあなたじゃ、つまらないもの……。それにね?たまには母親らしいことするのも悪くないわ。』
驚くウルドをそっと抱きしめ、ヒルドは呟く。
『戻りなさい、あの娘達の元へ……。それにしても、あの人にしては粋なコトしたわね。私は永久追放って言ったのに……ふふふ』
含み笑いをするヒルドに、ウルドは首を傾げた。
『後でわかるわ。じゃあね、ウルド……。母さんって呼んでくれて嬉しかったわ……。』
ウルドの額にキスをすると、ヒルドもまた姿を消した。
ウルドは立ち上がり、ゆっくりとベルダンディーのところヘ行く。瞳いっぱいに涙を溜めて、ベルダンディーはウルドを見つめていた。
『ヒルドに借り作っちゃったよ。』
恥ずかしそうに、そう一言だけ言ってウルドは小さく笑った。