仮面と黒猫の探し物-3
2
夕日が地平線に沈むかという頃になって、同行人が目を覚ました。
彼は四六時中いつも仮面を被っているから、目覚めてもすぐにはわからない。
どこ見てんのかわかんないし。
『…おはよう。ナナ。』
眠そうな声で同行人が呟いた。
『おはようイル。お日様はこれから寝るって。』
『…もうそんな時間なの…?だめだなぁ…荷馬車の揺れって気持ちよくてついウトウトしちゃって…。』
旅の同行人はイルという。
いつも仮面を被っている、変な服と粗末なマントを羽織った17歳の男の子。
やや痩せ気味の細身な体格だが、一人で旅をしているだけあって、無駄な脂肪や肉は無く、程よく引き締まった体をしており、真っ白の髪が特徴的な少年である。
いつだったか本当の名前も教えてくれたけど、長すぎて覚えられなかった。
だからナナは彼のことを縮めてイルと呼んでいる。
『イルさぁ、前から思ってたんだけど寝る時ぐらい仮面外せば?』
わざわざ仮面の下に手を突っ込んで目を擦るイル。
『うーん…でも…。』
『あとその変な服も。道化師?…の服だっけ?そんな変な服着て良く眠れるね…。猫からすれば服着るだけでも気持ち悪いのに…。』
『いいんだよナナは猫だから服着なくて。』
『うんそうだね。』
『この服は…仮面を被っていて違和感が無い服装っていったら、これぐらいしか思いつかなくて。好きで着てるわけじゃないよ。子供すごく寄るし。』
『うんそうだね。』
『まぁ着替えるの面倒くさいし、慣れてきたら眠れるよ?仮面も同じ。』
『そうなんだー。』
『…ナナ。』
『なーに?』