想いのいきつく果て〜揺れる想い〜-1
搭乗口に入っていこうとする紘子の体を無意識に引き寄せていた。
抱き締めた体は小さくて壊れそうで……今離したらどこかへ飛んでいってしまいそうで……
思わず抱き締める腕に力がはいる。
「…しの…くん?…」
紘子……お前が俺をよぶその甘えた声も、すぐに赤面する顔も、ベッドの中での仕草も、すべてが俺を狂わすんやで…本当は帰したくなんかないんやで、旦那のいる東京になんか…
こんな俺も紘子の前じゃ、ただの独占欲の強い嫉妬深い男やな…
声にならない心の叫びが頭の中を駆け巡る。
「…紘子…好きやで…」
たった一言…これが精一杯だった。
あの時…
ホテルで携帯がなった時、一気に現実に引き戻された。
『24』と『19』、俺には付き合ってる彼女が2人。
でもそんな事実より、紘子にはただの彼氏じゃなく、旦那がいるんだってこと、人妻なんだってことが頭から離れなかった。
そんなこと始めからわかってたことやんか…
人を好きになるってこういう事なんやって、24年間生きてきて初めて思いしらされた。
今まで女に不自由したことはなかった。
相手が言い寄ってくれば、拒まない。
ただ、付き合ってる奴がいれば、他に女を作らない。理由は面倒くさいから…
今は例外…『24』が彼女いても付き合って欲しいと言ったから…
今まで彼女の名前を呼んだこともなければ、好きと口に出したこともない。
俺、最低やん、人のせいにして、常に受け身で…
本当にいい加減に付き合ってきた。
俺は一生、人を本気で好きになることなんかない、そう思ってた。
でも…
本当に欲しいものって手に入らんようになっとるんかな…それとも今までの罰なんかな…