けんぽなし〜再開〜-6
「ない…ないの…太一からもらったどんぐりがないの!!」
「え…」
「だめ…どんぐりがないの…ないの…」
「瑞希…」
「…違う…違う…違うの…違うの…」
「おい…」
「違う…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」
「…瑞希?」
「ごめんなさい…私なの…私が…私が太一を追い込んだの…私が太一の手を振り払ったから…」
「瑞希…落ち着いて…」
「私なのっ!!…太一は手をのばしてた…全部知ってたのに…知ってたのに、振り払ったのっ…」
私は何を喋ったのか…
どう泣いたのか…
どう言葉になっていたのか…
バンっ、ドンっ、バターンっっ、
すごい音がして
気づいた時には…
耕太郎が…
太一の部屋の戸を蹴り倒していた…
9年前ー
「昨日見つけたんだっ、でかいだろ〜…瑞希にあげる…どんぐり」
小学校に入ったばかりの時、私は、学校に馴染めなくて、いつも1人でいた。
私達の通っていた保育園は独特で…
テレビはダメ
キャラクターはダメ
習い事はダメ
お勉強はダメ
……
カルチャーショックだった…
みんなの話題についていけない事と、みんなが知っている事を私は知らないという事…
みんなとは違うと思った。
同じにならないといけないと思った。
そして、私は無口になっていった…
「どんぐり、大きいだろ…瑞希にあげる…だから、元気出して」
そんな時、太一が救いの手を差し伸べてくれたのだ…
本当に救われた…
不安になると、どんぐり握る…そうすると落ち着いて、元気になれる。
中学に入り、太一はいじめられるようになっていく…
「瑞希…」
!!っ
「太一…」
「母さんが渡したい物あるから、寄って帰ってって…」
ー……
「あ……うん、分かった…」
知ってたのに…
分かってたのに…
太一からのSOS…
「あ、見ろよ、あいつ人間と喋ってるぜ〜」
「はぁ〜!?人間の言葉、分かるんですか〜!?」
「もう迷い込んでくるなよ〜人間様の所に」
「てか、消えろ、消去〜」
太一のクラスの男子たちの声が、私たちを包んだ。
私は…怖かった…
悔しさに唇を噛み締める太一の姿…
「瑞希…俺…」
私は…怖かった…
私は…自分の感情を優先したのだ…
「太一…ごめん、友達待たせてて…」
見え透いた言い訳で、太一の手を払い…言葉を…流した…