僕とあたしの夏の事件慕? 第六話 「真実を探して」-7
◇――香川澪――◇
気が付くと暗く、黴臭い場所にいた。
まだ少し眠く、頭が痛い。自然じゃない無理矢理な睡眠による弊害だと思う。
でも、いったい誰が? っていうかここ何処?
状況を確かめようと、目を凝らす。すると暗がりの中に人影が見えた。
次第に明瞭になるとそれが愛美さんだとわかる。だけど、なんだか様子がおかしく、手を後ろに組んで頭をもぞもぞと動かしている……? いや違う、手を縛られているんだ!
あたしは立ち上がろうとしたけど、身体に異変を感じる。見ると両手両足がベルトのようなもので縛られていた。周りを見ると椿さんと梓も同じように拘束されていた。
「……愛美、もういい、やめろ……」
「……はい……」
しばし困惑してたけど、哲夫のいやらしい声で事態が把握できた。
あたし達、狸達に捕まったんだ……!
「真二叔父様、これはどういう事ですか?」
「すまないねぇ椿君……本当はワシもこんなことをしたく無いのだが、哲夫が短気を起こして……」
「椿が叔父さんを後見人に認めれば、こんなことしなくて良かったんだけどな」
「なに言ってるのよ! こんなことしてただで済むと思ってるの!」
威勢よく吼える梓だが、この状況では一〇〇パーセント奴らが優位。
「世の中には便利な道具があって、ワシもその恩恵を預かろうと思ってな」
よく見ると、部屋の奥にはハンディカメラが構えられており、ジーッ、と無機質な機械音をあげている。
「なぁに、ちょっと気持ちよくなったところを撮るだけさ……天井のシミでも数えていればすぐ終わる……ひゃっはっはっ……」
下品な声で笑い出す二人に梓は怒りを隠せない。だけど身をよじっても拘束具が身体に食い込むだけ。
「澪と愛美さんは関係ないでしょ? なんで連れてきたのよ」
「まぁ保険みたいなもんかな、後でお前らが裏切らないためのな……」
つまりあたしは人質か。
「真二叔父様……私、椿が真澄家の当主として申しあげます。真二叔父様を真澄家の後見人として、資産の管理を任せます。だから、梓達に手を出さないでください」
縛られ身動きできないながらも責任者として毅然と振舞う椿さん。しかし、哲夫は椿さんのアゴを掴みながら喚く。
「口頭での約束なんてもろいもの、信用できると思うか? いいじゃねえか、別に初めてってわけじゃねえんだろ? あの楓って奴と、おとといもよろしくやってたんだしなぁ!」
「そんなこと……ありません」
ちょっと意外な話に耳を立ててしまうけど、今はそんなことより心配すべきことがある。
……もちろんあたし達の処遇。つまり貞操についてだ。