レッド・レッド・レッド-36
マグカップの中に、濃く鮮やかな紅色が輝いていた。
それはエイジがバギーを回している間の、ジャムとダナによる昼食の買出し中、仕事の終わりに飲もうと買ったものだった。
『赤き雫』として遺跡の杯に注いだものと比べれば味は劣るかもしれないが、それでも十分によい芳香と色をしている。
エイジは少しばかり照れた様子で頭を掻き、カップの中を覗き込んだ。
ぐいとカップを煽れば、鮮烈なぶどうの香りが鼻腔をくすぐる。
喉を潤すぶどう酒は、真っ赤に染まった街とぶどう畑の絶景とも相まって格別だった。
「ジャム」
「……何?」
エイジのいつになく真剣な瞳と言葉に、思わずジャムがどきりとする。
それから、エイジは照れ臭そうに頭を掻きながら言った。
「その……何だ。今度、ラグーンにでも……遊びに、行くか」
ジャムはその言葉に驚いたように目を瞬かせると、カップの中の赤い液体をぐっと飲み干した。
――あたしの顔が赤いのは、お酒のせいだからね。
まるでそう言わんばかりに、空になったカップを音を立てて置いて、ジャムは両の頬を手で覆う。
それからふうと息をつき、沈み行く夕日を一心に見つめながら笑みを浮かべた。
「絶対、だからね」
そう言った彼女の顔が真っ赤に染まっていたのは、夕日のせいだろうか、ぶどう酒のせいだろうか。
それとも――。