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ジャム・ジャム・ジャム
【SF その他小説】

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レッド・レッド・レッド-35

終章 顔、真っ赤だよ

――エイジは愕然としていた。
「俺の全てが……俺の宝が……」
彼のレザージャケットの背にも刺繍されている、エイジとダナの船プラチナ参号。
酒場ロージィ・マウンテン裏にある船着シートを被って船内に入って行った。
なるほど、ああいう使い方すンのね、とはダナの言葉だ。
彼は消火栓を片手に、ガルーと共に外からの鎮火に奮闘していた。
「俺達燃えやすい身体してるからな。防火シートは必需品だぜ」
「防火ジャケットでも買えばいいのに」
「んな高価なもんは買えねえよ。あのシート、ギャラクティカのガラクタ市で150センチ四方1000Gなんだぜ」
そんな会話を交わしながらの消火活動によりやがて火は消えた。
船内の様子を見てきたルーによれば、致命的な傷もないため船自体は動くらしい。
しかし外傷はひどく、修理に出さないと長くは持たないと言う。
「ローゼンロットの奴ら――!」
そんなルーの言葉を聞き、エイジの中に怒りが沸々と込み上げてくる。
「だけど、何でこれがアタシ達の船だって分かったのかしら?」
未だ微かに煙の上がるボロ船プラチナ参号を見上げ、ダナは首を傾げる。
するとジャムはエイジのジャケットを指差して苦笑した。
「多分……これだよね」
エイジこだわりの真紅と朱色のレザージャケットの背には、彼らの船であるプラチナ参号と『PLATINUM』の文字の刺繍がされていた。


「ちくしょー、この上婦警さんとのデートはお預けかよ……」
おまけに報酬の12万Gどころか、船の修理費さえも飛んで行ってしまう。
エイジは船のひしゃげた甲板に腰かけ、深く溜息をついた。
「そんなにデートしたかったわけ」
場に、それは泊めてある筈であった。
「俺の……夢が」
「エイジ! 呆然としてないで手伝ってッ!」
ダナの怒鳴り声も、今の彼の耳には届いていない。

プラチナ参号はボロ船と化していた。
レーザーで焼かれた傷はなく、鎖や弾丸によって船の外面は抉られており――それで明らかにこれがローゼンロットの仕業であると分かる。
また船の一部は燃えており、ルーがガルーの防火彼の後ろから、そんなジャムの声。
彼女はエイジの傍らに腰を下ろした。顔を俯かせたまま、こくりとエイジは頷く。
「……なら、あたしがしたげよっか」
小さく笑みを浮かべ、夕日に沈む空を見つめながらジャムが言った。
不意に言われ、エイジが思わず言葉を詰まらせる。
「え……え?」
顔を赤くし、戸惑うエイジにジャムはくすりと笑った。
「バーカ! 冗談に決まってるじゃない」
言って立ち上がり、ジャムは意地悪げににっと口元を吊り上げた。
そして間抜けにも口をぽかんと開けているエイジを笑う。
「本気にした? 顔、真っ赤だよ」
「だ、誰が!」
ようやっとエイジがそれだけ言葉を絞り出す。
「大体お前な……!」
ジャムに噛み付くエイジ。
しかしその気がそがれたのは、彼女が一本の酒瓶を差し出したからだ。
どこから手に入れたのだろうか、彼女はぶどう酒の酒瓶とアルミのマグカップをふたつ取り出した。
「ぶどう酒……? お前いつの間に!?」
「あたし達って優しいよねー、エイジへのご褒美だってさ」
ジャムはカップのひとつにぶどう酒を注いでエイジに手渡す。


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