僕とあたしの夏の事件慕? 第三話 「引っかかる部分?」-4
「あれ、これ何かしら……」
ベッドの下に何かが見えた。どうやら鍵みたいだけど……どこの部屋の鍵かな?
「澪、それマスターキーだわ……なんで真琴君の部屋にあるの?」
「知らないわよ……まさか真琴が犯人?」
「真琴君がそんなことするハズないわ!」
「そ、そうね……とりあえず蔵で見つけたとか適当に誤魔化して報告しにいこう」
***―――***―――***
もう一度、皆に応接間に集まってもらった。
鍵は蔵で見つけたとウソの報告をしたけど、みんな一様に首を傾げ何か言いたそうにしている。しかも、狸にいたってはあたしを睨んでいる。
「な、何ですか……何か言いたいことがあるなら、言ってくださいよ」
堪えきれず疑問の眼差しの根拠を問う。すると、哲夫が代わりに口を開く。
「お前が見つけたっていうけどよ、自演じゃないのか?」
「何それ、せっかく見つけてきたのに、その言い方おかしいんじゃない?」
「第一発見者を疑うのは当然だろ?」
「ドラマの見すぎだわ!」
「澪は昨日ずっと私と一緒だったわ。そんなことする暇、あるわけないじゃない」
梓が弁護するも、哲夫はいやらしい笑いを浮かべたまま。
「お前が一緒って事が逆に疑わしいな」
「な、それどういう意味よ!」
「よく考えてみろ。マスターキーは椿が持っていたっていうが、本当はお前が持ってたんじゃないか? そんで叔父さんが寝てる隙をみて二人で部屋を荒らす……。だが、騒ぎに怖くなって、あたかも蔵で鍵を見つけたフリをした……とかな」
「そんな、なんであたしがそんな回りくどいことしないといけないのよ! それに、
そんなことする理由無いじゃない!」
あたしの抗議も何処吹く風、まったく気にしないで哲夫は続ける。
「お前はな……だが梓は違う。叔父さんに嫌がらせしてでもここから追い出したい……違うか?」
無言の梓は図星をつかれたというより、怒りのあまり言葉が出ないみたい。出て行ってもらいたいのは図星だろうけど。
「哲夫、その辺にしておけ……ワシも事を荒げるつもりは無い」
さっきまで散々喚いていたクセに、今更何言ってんのよ!
「椿君、またこんな事になったら困るから、ワシが鍵を預かっておいて良いかな?」
「……はい」
意外なまでに従順に頷く椿さんに、その言葉の意味が一瞬分からなかった。
「ちょ、ちょっと姉さん、何言ってるの!」
納得いかない梓は悲鳴に近い声で抗議するが、椿さんは鍵を狸に渡す。対照的に狸は嬉しそうに鍵を受け取ると、意気揚々と応接間を後にする。