DEAR PSYCHOPATH−4−-4
「あの、僕の夢については」
おずおずと、二人の話に話って入ると、ケイコさんが笑って頷いた。
「忍、君、夢の中ではどういう気分だった?」
彼女は再びパソコンの置いてある席へ戻ると、細い脚を組んで言った。どう言っていいものか分からず、後ろに立つ流を見あげる。彼は、一度だけ小さく頷いた。
僕の見たこと、感じたことをそのまま自分の言葉で説明していいと言っているんだろう。
僕は、この一週間続いた、あの反吐の出るようないまいましい夢について話始めた。その世界では、自分は外人で、言葉ではとても言い表せない程の狂気だということ。かわいらしい少女ベッキー、そしてがむしゃらに走り回りたくなるような、あの広い大地と、全てを包み込んでくれるような空のこと。全て始めて見る景色なはずなのに、何故かそこについてよく知っているということ。
別に、それを全て信じてもらおうとは思わなかった。僕が第三者だったら、多分信じきれなかったと思う。けれど、彼らは違った。まるでそれが常識であるかのように、ごく自然な口調で話を進めた。
「夢の中での君の名前は?」
という、流の質問だった。
「・・・ヘンリー」
絞り出すように答えると、さっきまで沈黙を守っていたケイコさんが、狙ったよう
に立ちあがり、僕を呼んだ。
「忍、君の見た夢は記憶よ」
「記憶?」
僕は眉間にしわをよせた。
「その夢は、ヘンリーという人物の記憶なんですよ」
と、今度は横に立っている流が付け加えた。僕は唾を飲み込んだ。
「ど、どういう意味だよ」
「単刀直入に言います。ヘンリーとは忍、あなたの前世です。そして、あなたが毎晩見続けてきたあの悪夢は、彼が生きていた頃の記憶なんです」
「な・・・」
・・・・・んだよそれ!と、言いかけた僕を、再び彼が制した。
「あなたの中で、ヘンリーが覚醒しようとしています」